脳に作用する向精神薬は、精神疾患に苦しむ患者たちを救ってきた。だが、医師を信じて飲み始めた抗うつ薬や睡眠薬、抗不安薬の副作用で、地獄をみる患者もいる。体質によっては性格や行動が激変し、心身のみならず人生をも激しく揺るがす苛烈な副作用に見舞われる。 日本には今、睡眠薬などの長期使用で処方薬依存に陥った患者があふれ、薬を止められずに苦しんでいる。ところが国は実態調査をせず、救済策を示そうとしない。医師たちの無責任な漫然処方がもたらした数え切れないほどの「医原病」。その典型を紹介する。 ジェイソンのような刺青にピアス 「なんだこれは……」 赤城高原ホスピタル(群馬県渋川市)の診察室で、院長の竹村道夫さんは息を呑んだ。 患者は2人の幼子を持つ30代の主婦、上原直美さん(仮名)。上原さんの体には、経験豊富な精神科医も二の句が継げなくなるほどの際立った特徴があった。 左右の上腕、片方の下肢、背中の左上