御伽草子. 第19冊 (一寸法師) - 国立国会図書館デジタルコレクション ※この記事では、国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。 【原文】 夫婦、思ひける様《やう》ハ、 「あの一寸法師めを、何方《いづかた》へも遣《や》らバやと思ひける」 と申せバ、やがて一寸法師、此由《このよし》承《うけたまは》り、 「親にも斯様《かやう》に思ハるゝも、口惜しき次第かな。 何方へも行《ゆ》かバや」 と思ひ、 「刀無くてハ如何《いかゞ》」 と思ひ、針を一ッ姥に乞い給へバ、取り出し給《た》びにける。 即《すなハ》ち麦藁《むぎハら》にて柄《つか》鞘《さや》を拵《こしら》へ、 「都《ミヤこ》へ上らばや」 と思ひしが、 「自然、舟無くてハ如何あるべき」 とて、又姥に、 「御器《ごき》と箸《はし》を給べ」 と申し受け、名残惜しく止むれども、立ち出《い》でにけり。 住吉の浦より、御器を舟とし