棋士・羽生善治が27年ぶりに無冠となった。そこで本人が選んだ肩書きは「九段」。7つの永世称号をもっているのに、単なる段位を選ぶのは、なぜなのか。インタビューを重ね、『超越の棋士 羽生善治との対話』(講談社)を書き上げたルポライターの高川武将氏が分析する――。 自ら選んだ肩書 27年ぶりに「無冠」になった将棋界の王者・羽生善治が、自ら選んだ肩書は、単なる段位の「九段」だった。 タイトルを持たない棋士が段位を名乗るのは当然のことだが、羽生だからこそ、そこには彼の決然たる意志が如実に表れている。 永世七冠を達成した2017年の竜王戦直後に話を聞いた際、羽生が実感を込めてこう言っていたのを思い出す。 「自分がどこまで第一線でやっていられるかは、1年1年やってみないとわからない。その感覚はかなり強くあります」 プロ棋士として一兵卒になることで、できるところまで第一線で闘い続けるのだという強い覚悟を明