国書データベース ※国文学研究資料館所蔵 (CC BY-SA) 【原文】 翌日《よくじつ》、又来り、「如何《いか》に」と問ひ給へバ、 「地獄《じごく》、極楽《ごくらく》を目《ま》の当たりに見侍りぬ。 極楽《ごくらく》の門前に僧、御座《おハ》して、『此の所の事、語《かた》るな』と固《かた》く制《せい》し給ひぬ。 其の僧、数珠《じゆず》を与へて、我《わ》が名を妙槃《ミヤうはん》と付け給ひし。 又、累《かさね》、其の門外にて、 『汝《なんぢ》は定業《じやうごう》来たらねバ、皈《かへ》るべし』 とて、衣の半《なかば》[はん?]を我に掩《をゝ》ひて、 『此処《こゝ》は地獄《ぢごく》なるぞ』 と云ひて去りにき。 我、衣《ころも》の隙《ひま》より覗《うかゞ》ひしに、白き途《みち》有りて、累《かさね》、其の方へ至ると思へバ、梦《ゆめ》の覚めたる心地《こゝち》しけり」 と語れり。 【現代語訳】 翌日、祐天は