かつてE・H・カーは『危機の20年』で平和的変革(peaceful change)、すなわち「国際政治において、そのような[平和的]変革を戦争によらないでいかに実現するか」について検討を加えた(『危機の20年 1919-1939』岩波書店, 1996年: 378頁)。そして「平和的変革の諸方法を確立することは…国際道義と国際政治との基本問題である」(398-399頁)と指摘し、力と道義の妥協ないし折衷にもとづく平和的変革のあり方を探求した。平和的変革の問題は、第二次大戦前夜の緊迫した状況下に生きたカーにとって、一章分を割いて考察するだけの価値がある課題であった。しかしながら第二次大戦後の世界が冷戦に移行するにしたがって、力の役割を重視する現実主義の古典としてカーの『危機の20年』が受容される一方、カーの言う平和的変革が宥和政策と同義であった点も影響して、米ソの厳しい対立状況である冷戦におい
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