幕末の儒学者、安積艮斎(あさかごんさい)の国防論『洋外紀略』は、「徳川の平和」による安穏に慣れた民たちが、西洋列強という「素早くて荒い虎狼(ころう)の異民族」に対抗することの困難を憂えた上で、幕府にこう説いている。「沿海の要害の地にはりつき、砲台を並べ、のろし台を設け、士気を鼓舞し…」。 ▼北朝鮮や中国の脅威にさらされる今で言えば、ミサイル防衛システムに当たろうか。明治維新の功労者であり、事実上の薩摩藩主だった島津久光は同書全文を書き写したという。先人たちの危機感のほどがうかがえる。 ▼新幹線の車中で先日、手に取った雑誌『ウェッジ』4月号の巻頭記事は、「四面『核』歌状態の日本が生き残る道」という題だった。記事中、中国が日本を対象とできる中距離ミサイルを数百基保有していることが指摘されていた。 ▼自民党は先月30日、敵基地攻撃能力を保有するための検討を求める提言をまとめ、安倍晋三首相に提出し