と言おうか、探偵小説と言おうか、とにかく『本陣殺人事件』は日本初の本格推理小説とされている。読んでおかなければならない本のうちのひとつであるが、これまで機会がなかった。サラッとは読めない、と前回書いたけれど意外と二時間ほどでスラスラ読めた。 日本家屋はふすまや障子などプライバシー保守には向かない構造ゆえ、密室殺人のトリックには適さないとされていた。それが横溝正史によって立派に成立することが証明されたこと、金田一耕助が初登場したこと、の二点だけでも日本推理小説史に残る作品。らしい。現場を新婚初夜の離れにしたこと、また、積もった雪に足跡がなかった設定など、日本家屋での密室性を高める独自の工夫が見られる。 決して名文家ではない。同一の修飾語をごく近い文脈で使用したりするあたり、そういったことには無頓着なのかも知れない。それでもこういう類いの小説では明快で整然とした描写が大切であり、そこに関して文