ブックマーク / www.axis-cafe.net (10)

  • 違いのわからない人たち - おおやにき

    さて前エントリで触れなかったのが、議会多数派による意思決定がいかなる個人も基的人権を奪われてはならないとする(1)リベラリズムに反していた場合にはどうするか、という問題である。まず確認すべきなのは、この点に関する最終的な判断は憲法98条1項および81条によって裁判所に委ねられており、ということは実際に損害が発生したことを前提に提起される訴訟においてしか確定されないということである。だがもちろんそれは立法が実現したあとの・事後的段階であり、そこにおける判断を踏まえて投票の場面における意思決定を行なうことは端的に不可能である。我々は、事後に裁判所がどのように判断するかを予期し、その予期に対して賭けざるを得ないということになるだろう。 だがもちろん我々としてはできるだけ分のいい賭けを挑みたいだろう。そこで私としては、内閣法制局が行なう法令審査を信頼することが一つの相当安全な手段になると考えてお

  • 体罰と暴力 - おおやにき

    大阪市立桜宮高校の男子生徒が自殺した事件以来、体罰をめぐる議論がかまびすしいようである。「義家政務官「体罰ではなく暴力だ」 自殺の事実解明指示」(asahi.com)などという報道もあり、これに対して「体罰は暴力に決まっているだろう」と反発している人々も見受けられ、一方では前者が必然的に有形力の行使を伴う以上その通りなのだが、「死刑によって殺人は減る」と主張している人に対して(いやその当否はともかくな)「死刑は国家による殺人にほかならない」と言うようなもんやな、とも思う。法による統制を受けていることによって死刑が単なる殺人とは区別されている(ことになっている)のと同様に、体罰も統制されていない暴力とは違うよねという立場もあるだろう(再び、その当否はともかくとしてだ)。要するに出だしの定義問題から混乱しているので、互いにわら人形を叩いている部分がある。 管見の限りではあるが、よほど極端な人を

  • 憲法使いの弟子 - おおやにき

    「だまれ俺は芦部信喜教授の孫弟子の同期だぞ」ってのはどうか(挨拶)。憲法問題だから「ノモス主権論尾高朝雄教授四世の孫弟子」の方がいいかな。しかしその、尾高宮澤論争以来の敵対派閥(笑)だからというのではないが、天賦人権説というのもそうスジのいい議論ではないので切り札的にそれは天賦人権説否定ですねドヤアみたいなのもどうかと思ってちょっと書く。 というのは自民党の憲法改正案にまつわる問題で、それを進めている人々がtwitterでうかつなことを言っているのに対して怒っている人々がいるという話であり、いや個人的にも先般提案された改正案はろくでもないものになっていると思っているわけではあるがおそらく私が問題にしている箇所は人々が怒っているのとは違うし、いま問題にされているような論じ方が利口だとも思えない。というので少し書いて放っておいたら政治のほうが動き出したりしてどうしたものかと思っているわけだが、

  • 続・ダウンロード犯罪化の経過について - おおやにき

    話題になっていた違法ダウンロードの犯罪化を含む著作権法改正案が15日中に衆議院文部科学委員会・会議で可決されたとのこと(「リッピング違法化+私的違法ダウンロード刑罰化法案、衆議院で可決 」Internet Watch)。報道もされている通り今国会は議案の処理が非常に低調で、内閣提出法案ですら5月23日段階で25%弱という水準にあり、会期末が6月21日に迫っていることもあって(まあ衆議院の優越があるので延長しようとするだろうけど)このまま潰れるんじゃねえかなと思っていたところである。どうも与野党で対立していない法案についてはやっぱり処理しておこうと、ギリギリになってそういう空気になったようには見える。 さて件についてはすでに書いたことがあるが、内容面については現在の民事違法規定も活用できていない状況でさらにハードルの高い刑事制裁を追加しようとするもので、威嚇効果を除けば実効性は期待できな

  • 正当性と正統性 - おおやにき

    多分意図的なものではないと思うのであげつらう趣旨ではない。「Nature誌、「Wikipediaの記事は取り下げない」」(ITmedia News)という記事が「「Wikipediaとブリタニカ百科事典の精度は互角」という記事にBritannicaが反論したことを受け、Nature誌が記事の正統性を主張した。」と報道しているのだが、ここでの「正統性」の使い方がーー法学や哲学の観点からするとーー間違っているという話。 「せいとうせい」で我々が使うのは「正当性」と「正統性」という語である(「政党制」とかは出てくる文脈がまったく違うので無視する)。似たような話で出てくるので混同しやすいが、我々はこの二つを区別して使っている。どういう意味かというと、「正当性」(justness)は一階の正しさというか、あえて言うと今ここで正しい(just)かどうかを問題にする概念である。正しいことが証明できるかと

  • 天下り? - おおやにき

    なんかその、原発を容認する最高裁判決を書いた判事が東芝に天下っていたとか主張している人がおり、どうも震源はこのあたり(My news Japan)なのかな。全文は登録しないと読めないとのことなのですべては確認していないが、事実関係に根的な誤りがあるとは言えないもののその評価がおかしいように思われる。なので、情報全体を見てなおこれが天下りだとか癒着だとか考えるならそれはそういう価値判断もあるかもしれないがどうせtwitterとかで結論だけがばらまかれて独り歩きするのだろうなあと思うと、いつものデマ増幅の構造と同じだなと思う。あるいは東大の寄附講座の事例と同じね。あれも計算方法とかをすべて踏まえてなおそのような産学連携関係は許せないと思うならそれはそういう立場もありだとは思うが、基的にはそのあたりの背景を踏まえずに「5億円5億円」と叫んで回るあほおを増やしただけだったから無能かデマゴーグか

  • サンデルの政治思想(1) - おおやにき

    仕事の必要もあったので小林正弥『サンデルの政治哲学:〈正義〉とは何か』(平凡社新書、2010)を通読する。まあ全体としてはこの機会に(ブームの一部になっているものもそうでないものも含めて)サンデルの思想を他の論者との対抗関係なども踏まえて整理・要約しましょう、さらにそれと近似性のある・著者が主導してきた日の「公共哲学」について宣伝しましょうという感じので、いや別に宣伝が悪いというものでもないし(正直相当に鼻にはつくが)、サンデル派(著者ご自身が対抗相手については「ロールズ派」「リベラル派」と呼ばれるのでこういう位置付けをしても怒られないと思うのだが)からの要約としてはこうなるであろうなあという話が要領よくまとめられていると思った。ただその、まあモノの書き方としてはややいい加減なところが目に留まることも多く、まあ急いでまとめたのかなあという感じではある。以下、ページ数は注記のない限りすべ

  • 暴力装置 - おおやにき

    いやいや何を言っているんだ自衛隊は国家の暴力装置に決まってるだろう(参照:「仙谷氏「自衛隊は暴力装置」 参院予算委で発言、撤回」(asahi.com))。国家が(ほぼ)独占的に保有する暴力こそがその強制力の保証だというのは政治学にせよ法哲学にせよ基中の基であり、その中心をなすのが「外向きの暴力」としての軍隊と「内向きの暴力」としての警察である。で、日では主として歴史的経緯によりこの両者が相当明確に区別され、かつ現実的にもあまり仲が良かったり悪かったりという話があるわけだが(戦前ならゴーストップ事件が典型ね)、フランスやイタリアにある国家憲兵隊制度や、発展途上国に多い警察軍制度に示されているように暴力としての質に違いがあるわけではなく向きを変えれば同じものであると、そう整理されることになる。 その上で、まあ法哲学的にはゆえに国家は質的に悪であるとする立場と、しかしこの暴力抜きには社

  • 続・岡崎市立図書館事件(1) - おおやにき

    要約:高木浩光氏は、twitterによる・第三者の・不正確な要約をもとに、他人を罵倒してもよいと考えている人のようです。 経緯: 大屋、討論会でパネルとして発言。 参加者の中に、内容を要約してtwitterで発言していた人がいる。ただし欠けている・落ちている部分が必然的にあったほか、不正確な部分もあったと指摘されている。 たとえば以下の展開。

  • 岡崎市中央図書館事件 - おおやにき

    呼ばれたので行ってきました。パネル討論会「「岡崎市中央図書館ウェブサーバ事件」から情報化社会を考える」(主催:ESD21(持続可能なモノづくり・人づくり支援協会))。会場は中京大学の八事キャンパスなので、あまり普段と代わり映えがしないな。パネリストは4名で、他はまあ図書館系と情報系の方だったので、法律系としての機能を期待されているのかなあと思ってみたり。いや実定法学者でもないので多分に不安が残るところなのですが。 でまあ述べた内容ですが、この件で図書館側・ベンダー側・警察側に問題があったというのは多くの人が言っていることだし、まあベンダーの問題点って否定できないよねえと素人ながらに思うのでそのあたりは他に任せて、逮捕されてしまった開発者の行動にも「問題」(ベストプラクティスではないという意味でのね)はなかったかという点と、警察・図書館の行動にも「問題」はあったがその背景にある事情というもの

  • 1