ブックマーク / blogs.itmedia.co.jp/natsume (23)

  • 水木しげるさん逝去:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    http://news.yahoo.co.jp/pickup/6182543 水木さんが逝かれた。 デスクワークしていたら立て続けにマスコミからコメント依頼がきて知った。 貸時代にはほとんど知らず(「忍法秘話」では見ていたはず)、「ガロ」で作家として認識し、すっとぼけた中に尋常ならざるニヒリズムというか、索漠たる気配の漂う短編群が大好きだった。後年、捕虜生活中に描いた絵の、時間が止まった「死」の気配に、それが戦争体験とつながっているのを知った。いわゆる妖怪は、おそらくその「死」=「異界」からやってくる。そのはざまに立つのが、ねずみ男だったろう。 マンガ論を手塚を軸に始めたとき、手塚を相対化する存在のひとつが梶原一騎とならんで水木さんだったし、とにかく水木マンガのあの世界が好きだった。でも、インタビューでご人にお会いして、いきなりその人をった存在にやられ、「水木マンガも面白いけど、ご

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  • NHKEテレ「浦沢直樹の漫勉」:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    http://www4.nhk.or.jp/P3310/ 面白かった。浦沢が仕掛けたらしい企画で、漫画家の下書きからペン入れまでをカメラで記録し、それを漫画家が観ながら語り合うという、僕にとっては願ってもないドキュメント。登場するのは、浦沢人のほか、かわぐちかいじ、山下和美。この比較がまた面白い。 すでにすべての画面が頭の中で完成していて、いきなり登場人物の眉から描き始める浦沢に対し、頭部の輪郭からペンを入れ、しっかりと人物の輪郭を固めてから顔の各部に入り、眼を後から入れるかわぐち。 もっとも驚くのは山下で、ネームでいい線が出ているのに、ペン入れの段階で何時間も悩み、しまいにペンではなく初めてだという和紙に墨でいきなりボカシを効かせた絵を描き始め、ついにはそれを断ち切りの1ページ絵にすることを決め、前のコマ構成を変えてしまう。まるでペン入れもまだネーム中のような描き方。山下の場合、すでに

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  • 早稲田EX連続講義「手塚治虫の世界」初回の講義レジュメ:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    早稲田EXの7回連続講義も、次の土曜で最終回となりました。最終回は、これまでの夏目、岩下朋世、野田謙介、三輪健太朗の講義を受け、質疑と討議を行う予定です。 初回の夏目講義のレジュメを公開します。 2014.7.12 早稲田大学EX中野校 連続講義「手塚治虫の世界 -手塚治虫とマンガ論研究-」 第一回「手塚治虫をめぐる現在の課題」夏目房之介 1)「マンガの神様・手塚治虫」像の社会的浸透=手塚の「死」 1989(平成元)年2月9日 手塚没(1928(昭和3)年11月大阪生 亨年60歳)【注01】 2月10日付朝日新聞訃報「手塚治虫さん死去」〈『鉄腕アトム』『火の鳥』など日のストーリー漫画テレビアニメーションの創始者である漫画家、手塚治虫(てずか[ママ]・おさむ、名治)氏〉下線引用者以下同 【図1】 〈多くの漫画家に影響を与えたことや、斬新な手法や、テーマの開拓・・・・そのことの根拠はさま

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  • 『マンガを「見る」という体験』読書中:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    『マンガを「見る」という体験 フレーム、キャラクター、モダン・アート』(水声社 2014.7.20刊 2800円+税)を読み始めた。まだようやく半分しか読んでいないのだが、非常に刺激的で面白い。このは、2013年後半期に早稲田大学戸山キャンパスで三回にわたって行われた「マンガ的視覚体験をめぐってーーフレーム、フィギュール、シュルレアリスムーー」というワークショップでの発表をもとに各発表者によって書き下ろされた論文集である。僕も一度見に行ったのだが、言葉の共有、問題意識の擦り合わせというのは、美術とマンガの間でもなかなかに難しいものだな、という印象をもってしまった。いや、もっと率直にいえば幻惑的な言葉遣いに辟易しさえした。しかし、このでまとめられた論文を読むと、マンガ表現論が招来するはずだったろう原理的な問題が真摯に語られていて、まことに興奮させられた。 まず鈴木雅雄「瞬間は存在しないー

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  • 日本マンガ学会大会と「僕らの漫画」:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    会場で買った東日震災復興支援チャリティーコミックと銘打った『僕らの漫画』(「僕らの漫画」制作委員会 2012年)は、2年前のですが、三宅乱丈、村上たかし、えすとえむ、ヤマザキマリ、喜国雅彦、さそうあきら、とりみきなど多くの漫画家が参加してます。誰の、とはいいませんが、いくつか「名作」といっていい作品があります。いいです。 京都精華大学と京都国際マンガミュージアムで7月28~29日の両日行われた日マンガ学会第14回大会に参加してきました。ひとつは、うちのゼミの博士課程卒業生・可児洋介氏の発表「鶴見俊輔と石子順造のコミュニケーション論」(28日)があったので。発表は好評で、小野耕世さん、呉智英さん、村上知彦さんから「面白いね」との言葉を聞きました。うちの修士カ・ブンブンさん(冗談ではなくて、日の漢字にない文字の日語読みで、こうなっちゃう)のポスター発表もありました。 翌日のシンポジウ

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  • 鈴木みそ『ナナのリテラシー』:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    http://mandanatsusin.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/post-af91.html 「コミック・ビーム」(エンター・ブレイン)連載中の作品。いきなりマンガ出版市場の厳しい現実をリアルに、しかも分かりやすく説明し、「超売れっ子のベストセラー作家と、貧乏作家に、漫画家たちは二極化する」という恐ろしい結論を提示し、作中で鈴木みそが自作の電子化に乗り出す、というお話をマンガ化している。このへんの説明が素晴らしく、連載中から講義などで何度も使ってきたのだが、単行と電子版が同時にリリースされたようだ。以前から鈴木みそ『銭』1巻は、マンガ出版市場の説明のとっかかりに使ってきたが、こういう問題提起をしてくれると、学生にマンガ市場を教えるときにはじつに助かるなあ。 あとは、「漫棚通信」さんの記事で読んでください。例によって、とても上手に紹介されています。

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  • 岩下朋世・三輪健太朗トークイベント(米澤記念図書館):夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    講師:岩下朋世(マンガ研究者・相模女子大学メディア情報学科専任講師)、三輪健太朗(マンガ研究者・学習院大学身体表象文化学専攻博士後期課程) 聞き手:伊藤剛(マンガ評論家・東京工芸大学 マンガ学科准教授) 日時:2014年3月29日(土) 16:00~17:30 場所:米沢嘉博記念図書館 2階閲覧室 料金:無料 ※会員登録料金(1日会員300円~)が別途必要です。

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  • 三輪健太朗『マンガと映画 コマと時間の理論』刊行!:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    三輪健太朗『マンガと映画 コマと時間の理論』(NTT出版 ¥4200+税)が刊行されました! 三輪君は、わが身体表象文化学専攻の俊英で、大部の修士論文を提出後、博士後期課程に進み、現在も学習院で研究をすすめております。彼の関心は一貫して「マンガと映画を比較しうるとすれば、いかにして可能なのか?」という、きわめて原理的な問題にあります。 その修士論文は僕をはじめ、中条省平教授など、ほかの身体表象専任の方々にも高く評価され、「ぜひ単行化すべきだ」という話になりました。それから2年、かなりの書き直しをへて、460ページを越える歯ごたえのあるとなりました。学生さんには、この値段は少々歯ごたえがありすぎるかもしれませんが、それだけの価値はあります。 これまで日のマンガ論では、しばしば「手塚治虫が映画的な手法を導入し、戦後のストーリーマンガが始まった」とする歴史観で語られてきました。こうした言説

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  • 漫画家モノ二冊-『アル中病棟』と『チェイサー』:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    ここんとこ漫画家がいろいろ。 吾ひでお『アル中病棟 失踪日記2』(イーストプレス) 塀の中物とか色々ありますが、ウツで失踪中の体験マンガに続いて、アル中で入院した経験を吾ひでおがマンガ化した。ご存知の方には、大体想像がつくかもしれないが、これもまた興味深い人間模様や病院の実態が読めるだけでなく、何というか、吾ひでおの独特な距離感、虚無感の漂う飄々さが味。こういう経験モノにありがちな「感動」は、ない。ないだけに、ほんとに吾ひでおの体験なんだな、という感じがする。 それと、最後のとりみきさんとの対談が面白い。絵の引き方、俯瞰と仰角への変化に吾の意識の切り替えを読むとりさんの読みは、すでに批評家のもの。二人のやりとりには、実際にマンガを描いている人間の共通した感覚が流れている。 コージィ城倉『チェイサー』1巻(小学館) スペリオールの連載。昭和30年代、手塚治虫絶頂期に月刊マンガ誌で戦

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  • 宮崎駿『風の谷のナウシカ』マンガ版と「読みにくさ」:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    学習院身体表象の担当ゼミ(批評研究)で、以下のようなレジュメの発表を行いました。 2013.10.2-9 マンガ・アニメーション芸術批評研究(3限) 宮崎駿『風の谷のナウシカ』マンガ版と「読みにくさ」  夏目房之介 ※以下のメモは、今秋提出の当専攻博士課程後期・砂澤雄一の『風の谷のナウシカ』についての博士論文に触発されたものである。 1)『ナウシカ』マンガ版は読みにくいのか? 阿部幸広「究極の、そして最も幸福なアマチュア-マンガ家としての宮崎駿」(「ユリイカ 臨時増刊 宮崎駿の世界」青土社 1997年)をはじめ、『ナウシカ』マンガ版を「読みにくい」とする意見が複数ある。夏目自身は、違和感は多少あるが、それほど読みにくいとは感じていなかったので、少し意外であった。直観的には、宮崎のマンガ観が50年代の読書体験によって形成され、古典的な表現形式を踏襲しているために、現在のマンガ形式になじんだ読

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  • 岩下朋世『少女マンガの表現機構 ひらかれたマンガ表現史と「手塚治虫」』:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    http://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100002266 岩下朋世『少女マンガの表現機構 ひらかれたマンガ表現史と「手塚治虫」』(NTT出版)が出た。 先般のマンガ学会で岩下さんから直接いただいたので、その場でサインをしてもらった。 これは、岩下さんの博士論文『手塚治虫の少女マンガ作品における表現の機構』(2008年)の単行化である。博士論文については、2009年8月に当ブログで紹介している。内容の大筋においては、それほど修正を必要としないと思う。http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/2009/08/post-41a7.html 一般書籍というより、学術で、値段も3200円+税とかなり高い。が、博士論文よりはるかに読みやすい文章になっており、論文発表後に知られた最新のマンガ論文献などもきちんと参照して書か

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  • 「バンド・デシネ徹底ガイド」玄光社:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    http://www.genkosha.co.jp/gmook/?p=3824 「はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド」(玄光社 1800円+税)が出ましたね。日に紹介されている作家を中心に、カラー図版をふんだんに用いて紹介し、原正人らの解説、谷口ジロー、松大洋、江口寿史へのインタビュー、昨年鳥取市で行った谷口ジロー、ブノワ・ペータースと僕の座談「世界から見た谷口ジロー」、同じくコミティア会場で行われた「海外マンガ・ファスタ」のブノワ・ペータース、フランソワ・スクイテン、浦沢直樹の座談「BDとマンガ、その分岐点と共通点」、えすとえむ、ケン・ニイムラの「BD対談」などのほか、BD基礎知識のコラムなど、興味深い記事満載。さらにいろんな人がオススメするBDが盛りだくさんに載っている。昨今のBD翻訳ラッシュで興味を持った人には、いい入門書かも。 ちなみに、学習院で行った座談も掲載予定で

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  • 日高さんの修士論文:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    京都に行ったとき、よく交流会でお会いする京都大学大学院人間・環境学研究科の日高利泰さんから修士論文「1960年代の少女誌における恋愛の主題化と「少女」の性的身体」を送っていただいた。とても寡黙な人で、ほとんど話していないのだが、論文は大変優秀で、今後の研究がとても楽しみである。 主題は、タイトル通りだが、とても丁寧に、着実に検証を重ね、これまで曖昧なままに「何となくこうだろう」と思われてきたこの主題の前提を考究している。こういう地道な研究検証が、今後のマンガ言説の進展を支えるのだろう。僕らの時代とは違う言説の組み直しが進むことになる。これは、少女マンガ史だけでなく、戦前のマンガ史、戦後との連続性、他国のマンガ史、あるいは視覚文化史全体との関係史を視野に入れると、まだまだ先が長い。 日高さんの誠実さは、そもそもの前提を、自分の思い込みも含めて対象化しようとする、丁寧な自省的検証にあらわれてい

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  • 日経は大衆文化系弱いね:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGR0400S_U3A200C1000000/ アングレームBD祭で『ドラゴンボール』が特別賞、という記事なのだが、 〈日漫画などに影響を受けたフランス人が描くフランスの漫画は「バンド・デシネ」と呼ばれ、フランスの文化・芸術の一角を占めている。〉 とある。すごいね、どうも。 たしかに日マンガに影響を受けたBDもあるし、日やアジア、欧米各国のマンガの翻訳出版が、フランスのマンガ出版点数の半分を占めるといわれ、もっとも世界に開いた市場であることはたしかだが、アメリカン・コミックス、カートゥーン、日のマンガ含めても、それらに影響を与えてきたのは、歴史的にはむしろ欧州のBDだといわれている。コミック・ストリップへの流れが19世紀前半スイスのテプフェールから始まるという最近のマンガ史でいえば、この記事は逆のように読める。

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  • 今年のマンガ・ベスト:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    「ダ・ヴィンチ」2003年1月号 ブノワ・ペータース、フランソワ・スクイテン『闇の国々』小学館集英社プロダクション アレハンドロ・ホドロフスキー、フアン・ヒメネス『メタ・バロンの一族』同上 沖田次雄『ジジゴク』①双葉社 「フリースタイル」21 ①『闇の国々』 ②『メタ・バロンの一族』 ③さそうあきら『ミュジコフィリア』 ④シルヴァン・ショメ、ニコラ・ド・クレシー『レオン・ラ・カム』 ⑤ふみふみこ『ぼくらのへんたい』 ⑥エンキ・ビラル『モンスター 完全版』 ⑦『ジジゴク』 ⑧ジャン=ミシェル・シャルリエ、ジャン・ジロー=メビウス『ブルーベリー 黄金の銃弾と亡霊』 ⑨勝又進『赤い雪』 ⑩青野春秋『俺はまだ気出してないだけ』 10点中5点がBDになってしまいました。 マンガ関連としては、佐藤秀峰『漫画貧乏』、デヴィッド・ハジュー『有害コミック撲滅! アメリカを変えた50年代「悪書」狩り』、佐

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  • みなもと太郎、大塚英志『まんが学特講』:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    みなもと太郎、大塚英志『まんが学特講 目からウロコの戦後まんが史』(角川学芸出版)である。いやはや、もうむちゃくちゃ面白い。このについては、すでに「漫棚通信」さんが書かれています。 http://mandanatsusin.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-04ec.html 「新現実」という雑誌で連載された大塚氏によるみなもと氏インタビューをまとめたものだが、かなり削ってあったりするらしい。僕は「新現実」の字の小ささにめげて、ちゃんとは読んでませんでした。たぶん、単行のほうが読みやすいはず。 みなもとさんは、故米沢嘉博氏と並ぶマンガ知識の巨人ですが、とにかく既存のマンガ史言説では得られない知識や観点が目白押しで、たしかに「目からウロコ」であります。もちろん、基的にみなもとさん個人の歴史から導きだされた観点が多いので、そのまま採用するかどうかは読

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  • ごく個人的な村上春樹の小説についての感想:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    これは、ごく個人的な話で、村上春樹の小説についての批評とか分析ではない。なので、村上春樹の小説のファンや、その批評に興味のある人は読んでも意味がない。村上春樹の小説を僕が読んできて、やがて読まなくなり、最近また読み始めた、ただそういう話なので、一般的にも、別に面白い話ではないだろう。 要するに、個人的な記録のようなものだ。 村上春樹が文芸新人賞をとって最初の単行が出たとき、初めて彼の小説を読んだ。まだ僕は20代の終わり頃だった。それはとても僕を惹きつけた。何となく自分や自分の同世代にぴったりくるものがあるように感じた。 しばらく追い続けるうちに、その感覚は深まってゆき、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の頃には、そのラスト部分を読むために、わざわざ明治神宮に行って池の前のベンチで読むようになっていた。 彼の初期のの装丁には佐々木マキが使われていて、彼はその理由を短いエッセ

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  • 『魔法少女まどかマギカ』:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    アニメ『魔法少女まどかマギカ』全回を観てみました。 面白かった。「魔法少女」物そのものをロクに知らないけれども、構造がそのジャンルのパロディというか、メタ物になっているのはわかる。メタ物にするときの、一種の「悪意」も効果的だし、同時にそれを最後にまとめる力技もなかなかだと思う。そもそも、メタにすると、来的に話は終わらないし、まとまらないのがホントなのね。ほぼ、宗教宇宙観になってますが(「セカイ系」というより「ウチュー系」?)、ギリまとめましたってとこもイイです。 また、魔女世界を描くときのアニメーション映像も実験的でなかなか面白い。 とはいえ、個人的にはこのキャラ・デザインでなかったら、もっと入れたとは思う。好み的にダメな系統なんですね。それと「私なんて」っていう女の子(男の子でも同じか)が実は・・・・っていう話そのものが、イライラしちゃってダメってとこもある。多分、僕自身が十代にそうい

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  • 「大友克洋GENGA展」:夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    http://www.otomo-gengaten.jp/ 行ってきました。狭い会場に、ひたすら原画を並べ、『AKIRA』の全原画を棚状に並べるという、まあ「工夫がない」といえばいえる展示なのだが(えらく高い位置に掲げられた原画など、どうやって見ればいいのかわからん)、いったん入って大友の原画が目に入ると、ひたすら集中してしまう。やはり、彼の画力はハンパではない。これらの絵が時代の先端を切り開く圧倒的な印象を知っている僕としては、その感覚がよみがえり、目が離せなくなる。 とにかく都市の建築の描写への思いいれは、少なくとも当時の日マンガでは特異だった。その点でBDやアメコミに近いものがあるなあ、とあらためて感じた。大友の絵とデザイン感覚をもって、はじめて日マンガは都市と建築を絵の主役にすることができたのかもしれない(あ、いや宮谷一彦がいるか!)。 僕も全部は読めてない旧い原画もけっこうあ

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  • 佐藤秀峰『漫画貧乏』(PHP):夏目房之介の「で?」:オルタナティブ・ブログ

    『ブラックジャックによろしく』『特攻の島』の佐藤秀峰が、雑誌連載では赤字になる状況の中で原稿料の不合理に疑問を感じ、出版社との交渉を繰り返し、ついに紙媒体の泥舟的先行きに悩み、自作を含むマンガの配信サイト「漫画 on Web」を立ち上げていくまでの悪戦苦闘を書いた。 http://mangaonweb.com/creatorTop.do?cn=1 こうした問題は、すでに竹熊健太郎がある程度まで単行で追求しているが、佐藤の原稿料、印税収入と支出の関係の記述はさらに詳細で、それ自体、ほとんど外に知られることのない貴重な資料である。たんなる感情論ではなく、きちんとした収支の数字と、それにもとづいた交渉および出版社の対応を描いている。これは、現在のマンガ製作現場を考えるとき、重要な資料になりうるだろう。もちろん佐藤個人の経験ではあるが、少なくとも彼や、彼より過酷な状況にいるマンガ家、プロダクシ

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