宮崎駿が、いつのまにか「魔法」を物語の中心に置くようになっていた。 89年『魔女の宅急便』で魔法使いを主人公にして以来、92年『紅の豚』、97年『もののけ姫』、01年『千と千尋の神隠し』、04年『ハウルの動く城』、そして08年『崖の上のポニョ』、と並べてみると、『カリオストロの城』や『天空の城ラピュタ』当時の、宮崎アニメ=「漫画映画」という形容は、『もののけ姫』をいくぶん保留するにしても、今や「魔法映画」と言い直したほうがいいくらいに見える。 そしてその「魔法」によって、宮崎駿は、変身する主人公を繰り返し描くようになる。変身の理由をいっさい明かさない『紅の豚』のポルコもふくめ、名前を奪われることで元々の自分を忘れてしまいそうになる千尋にしろ(ここでの変身とは、じつに「忘れること」である!)、老女に変身させられてしまうソフィにしろ、変身によっていろいろと(客観的には)不都合な事態に直面するだ