『サマーウォーズ』を発表したばかりの細田守監督が、スタジオジブリで『ハウルの動く城』を撮り損ねたことは、わりと知られた話だろう。 最終的に宮崎駿が作り上げる『ハウル』を、「家」を逃れた老女が自ら「家」をでっちあげるまでの冒険物語…と乱暴に要約してみる。『サマーウォーズ』は、その『ハウル』を作ることのなかった演出家の新作、というふうに受け取ることもできる。 そしてこの映画を、家族の結びつきの中心にいる老女が、一家の使命を強調しつつ世を去る物語、とこれまた乱暴に要約してみる。と、どこか、後退戦の気配が漂い出さないだろうか…「おばあちゃん」の映画として。 「女系家族なんだよ」と作中人物に言わせてはいるけれど、『サマーウォーズ』で戦いを率先して担うのはもっぱら男たちだ。戦う女性は、戦う男たちを鼓舞するシンボルとして恭しく奉られるばかり(なぎなたを振り回すビッグマザーと、吉祥天女化するヒロインと*1