結婚するとき、妻に一つだけお願いしたことがあります。「禿げ始めたら、遠慮なく教えて欲しい。私と君のためにも、その方が絶対に良い。」と。 この約束が守られているのであれば、結婚したときも現在も、私はまだ「禿げ領域」に到達していないようです。 なぜ、こんなお願いをしたのかと言えば、日常生活で全くと言っていいほど役に立たないのに、何故か非常にセンシティブな頭髪問題に煩わされたくなかったからです。 はっきりと事実を伝えてもらえなければ「まだ禿げていないのではないか?」「もともとこのぐらいであっただろう。だから問題ないはずだ」と、明らかに禿げているにもかかわらず、見たいものしか見ない人間の性のとおりに現実を見ず、ひたすら逃避することになるでしょう。 また、そう思ってはいつつも、きっと心のどこかで禿げていることを自覚し、「溺れる者は藁をもつかむ」ということわざの通り、無意味なものも含めた様々なものにお
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