トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 書評 > 記事一覧 > 記事 【書評】 テロルの伝説 桐山襲烈伝 陣野俊史 著 Tweet 2016年7月17日 ◆時代と闘う小説家の意志 [評者]平井玄=評論家 かつて桐山襲(かさね)という作家がいた。八冊の小説を書いて二十四年前に四十二歳で死んだ。と、まずは紋切り型で言おう。彼の文学的な格闘を描いた評伝だ。力作である。 一九四九年に東京の阿佐谷で生まれる。六八年に早稲田大学に入り「全共闘運動」を体験する。その後「公務員として働きながら、夜、爆弾のような小説を書く」と陣野は記している。 八三年に「パルチザン伝説」を文芸誌に発表。侵略戦争で財を成した大企業を連続的に爆破した「東アジア反日武装戦線」を素材にした作品だ。ところが、「週刊新潮」の記事に煽(あお)られた右の人々が「不敬」と騒ぎ出す。これに桐山を含む複数の人たちが密