トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 書評 > 記事一覧 > 記事 【書評】 福祉政治史 格差に抗するデモクラシー 田中拓道 著 Tweet 2017年4月9日 ◆社会運動を組み込む仏国 [評者]根井雅弘=京都大教授 本書は、第二次世界大戦後から今日に至るまでの欧米と日本の福祉国家の形成・変容過程を、政治学・経済学・社会学の成果を駆使しながらまとめた「福祉政治史」である。 欧米は一括りにはできないほど多様である。英米は確かに一九八〇年代以降、新自由主義的政策が採られたという共通点はあるが、細かく見れば、「金融主導型レジーム」が確立したアメリカに対して、イギリスでは労働党政権の下で「人への投資」や「ワークフェア」(選別的な所得補助の意味だが、公的福祉に依存していた人びとが自ら労働市場で働くことを条件とする)が拡大したという違いがある。 また、戦後長いあいだ福祉国家やコ