『忘れられた日本人』で知られる民俗学者・宮本常一とは何者だったのか。その民俗学の底流にある「思想」とは? 「宮本の民俗学は、私たちの生活が『大きな歴史』に絡みとられようとしている現在、見直されるべき重要な仕事」だという民俗学者の畑中章宏氏による『今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる』が3刷となり、話題となっている。 ※本記事は畑中章宏『今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる』から抜粋・編集したものです。 「心」の民俗学と「もの」の民俗学 人文科学の諸領域は「私たちはどこから来たのか」「私たちはなにものか」「私たちはどこへ行くのか」という命題を追究するものだと私は理解している。歴史学も社会学も、人類学も民俗学も、究極の目的は、こうした命題を明らかにしていくことに間違いないだろう。 またそれは、人文科学にとどまらず、社会科学でも、自然科学でも目的とされていることなのではないか。そ