明治維新以降、日本の哲学者たちは悩み続けてきた。「言葉」や「身体」、「自然」、「社会・国家」とは何かを考え続けてきた。そんな先人たちの知的格闘の延長線上に、今日の私たちは立っている。『日本哲学入門』では、日本人が何を考えてきたのか、その本質を紹介している。 ※本記事は藤田正勝『日本哲学入門』から抜粋、編集したものです。 人新世の今だからこそ 「自然」ということばを聞いて、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。山や川、草や木の花や実、それに集まってくる昆虫や鳥を思い浮かべる人も多いであろう。私たちはそれらに取り囲まれて生きている。自然は私たちにとって親しい存在である。 しかし、いま、その自然が脅威にさらされている。過剰な開発によって破壊されたり、有害な物質を含む大量の廃棄物によって環境が汚染されたりしている。あるいは温室効果ガスの排出により地球温暖化が進行して、異常気象が増加したり、生態系に大き