多くの方たちが絶賛していますが、2021年に芥川賞を受賞した作家の李琴峰(り・ことみ)さんが朝日新聞に寄稿したコラムが本当に素晴らしかったです。魂を揺さぶる名文だと感じます。 李琴峰さんは今年のマルディグラ(ワールドプライド)に沸くシドニーで体験した様々なエピソードを振り返りながら、日本の今のトランスヘイトやLGBTQへのバックラッシュの状況へと思いを照射します。 冒頭、ボンダイビーチの崖の上に設けられた追悼記念碑のことに触れています。その記念碑の金属板には〈世界中の全ての都市の過去には深く暗い秘密がある。しかしこの類いの恥ずべき事件があったことは最終的に認められなければならない。そうしてはじめて、過去に苦しんだ人たちは、自身の苦しみがようやく認識されたと感じることができる。シドニーも例外ではない〉と綴られています。そこはかつて、1970年代から90年代にかけてハッテン場であり、ゲイバッシ