ブックマーク / kaikaji.hatenablog.com (15)

  • アダム・スミスと「公共性」について - 梶ピエールのブログ

    アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書) 作者: 堂目卓生出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2008/03/01メディア: 新書購入: 8人 クリック: 169回この商品を含むブログ (114件) を見る 『国富論』や『道徳感情論』を翻訳ですらまともに読んだことない無教養な人間にとってはとてもためになるだった。内容については、 ここで描かれたスミスは、個人の利益追求絶対者でもなく、急進的規制緩和論者でもなく、市場原理主義者でもなく、経済成長論者でもなく、富国論者でもない。人類の存続と繁栄を希求し,時々の政策課題に真摯に対応し、現状にたいして熱狂も絶望もしない等身大の人間に幸福の境地を見たスミスといってもいい。 という赤間道夫氏の評が簡にして要を得ていよう。 特に印象だったのは、「富」を目指す「弱い人(小人・俗物)」と「徳」を目指す「賢人(君子)」との二元論に

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  • 梶ピエールの備忘録。ヤバい経済学者とシロい振る舞い

    このたびようやくこの↓を読み終わったわけです。英語版はずっと前に購入していたのにお恥ずかしい限りですが。 ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する 作者: スティーヴン・レヴィット,スティーヴン・ダブナー,望月衛出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2006/04/28メディア: 単行購入: 15人 クリック: 383回この商品を含むブログ (330件) を見る さてこのの後半に、白人と黒人の教育格差について興味深い研究を行っているハーバード大の若手経済学者、ローランド・G・フライヤー Jr.氏がたびたび登場する。このフライヤー氏、昨年の9月にバークレーの経済学部のセミナーに来て講演しているのだが、そのときの題目が『ヤバい経済学』でもとりあげられている"Economic analysis of 'Acting White'"(シロい振る舞いの経済学)だった。もともとの50

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  • ボイコット・経済制裁・ハーシュマン(下) - 梶ピエールのブログ

    前回のエントリid:kaikaji:20060805の続きです。 さて、ボイコットと言うと一般的には市民団体やNGOが行うというイメージがあるが、時にはそれが国家レベルで行われる場合もある。一時の反日デモのときに叫ばれた「日貨排斥」(ほとんど現実的な効果はなかったが)はその典型的な例であろう。 あるいはそのようなボイコットが国策として行われる場合もあるが、これは通常「経済制裁」という名で呼ばれている。 さて、これらの国家レベルで生じるボイコット運動については、特に最近その実施の是非が議論に上ることが多いようだ。例えば、N国が行ったミサイル発射実験実験に対して、そのミサイルの射程範囲内にある隣国のJ国(いずれも現存する国家とは全く関係がないのでくれぐれも誤解なきように)が抗議を行い、実験の中止を求めて経済制裁を発動する、という例を考えてみよう。この行為は(上)で述べたボイコットが有効に機能す

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  • 梶ピエールのカリフォルニア日記。 - [経済][グローバリズム]ボイコット・経済制裁・ハーシュマン(上)

    先日児童労働問題に取り組んでいるNGOの方からコメントをいただいた(id:kaikaji:20060528#c1153979501以下)。 繰り返して書いてきたように、僕自身はいわゆるスエットショップと呼ばれる途上国における低賃金労働の問題を考える際には、グローバル経済と途上国国内に働く市場経済のロジックをまず考慮したうえで、それと矛盾しない形で適切な政策あるいは援助とはなにかを考えるべきだと思っている。別に市場経済のロジックに「従うべきだ」と主張しているわけではなくて、「それは無視できないよ」ということをわかって欲しいわけだ。 ただ、こういった経済学的な議論のいわば表面的な「冷たさ」に感情的な反発を抱いてしまう人々がいることも経験的によくわかっている。そういった反発が、経済学経済学者全般に関する不信感につながりかねないとしたらとても残念なことだ。なんとか生産的な「対話」を行う方法はない

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  • コルナイと中国経済 - 梶ピエールのブログ

    「嫁」といわれて素直に読んだ。 コルナイ・ヤーノシュ自伝―思索する力を得て 作者: コルナイヤーノシュ,Kornai J´anos,盛田常夫出版社/メーカー: 日評論社発売日: 2006/06/01メディア: 単行 クリック: 20回この商品を含むブログ (33件) を見る 訳者の盛田氏があとがきで嘆いておられるように、コルナイはその重要な主著の多くが完全な形では日語に翻訳されておらず、また過去に翻訳されたものも多くが絶版になっている。しかし、少なくとも旧ソ連・東欧の経済問題の専門家だけでなく、中国も含めた広い意味での移行経済を専攻しているものにとって、コルナイは経済理論家としてある意味でサミュエルソンやフリードマンなどよりも重要な存在であった。特に中国の場合、なによりも現在活躍中の経済学者の多くがコルナイの議論から、大きな影響を受けてきたという事情があるからだ。 たとえば、代表的な

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  • 『マルクスの使いみち』の使いみち - 梶ピエールのブログ

    マルクスの使いみち 作者: 稲葉振一郎,松尾匡,吉原直毅出版社/メーカー: 太田出版発売日: 2006/03/11メディア: 単行購入: 1人 クリック: 40回この商品を含むブログ (50件) を見る なんか、不遜なタイトルですみません。このは既に多くの人があちこちで感想を書いているようだけども、とりあえず自分なりの関心にひきつけて読み、今まで断片的だった知識を整理する意味で「使え」そうだ、という意味をこめてみました。 さて、個人的にはやはり二章の搾取をめぐる議論のところが面白かった。吉原氏自身による解説における以下の箇所が両者の立場についての簡潔な説明になっていると思う。 http://www.ier.hit-u.ac.jp/~yosihara/usagemarx.htm 生産的資産の乏しい個人はそれが豊かな個人に比して交渉力が弱くなる可能性がある、まさに労働者と資家の関係のよう

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  • 梶ピエールのカリフォルニア日記。 - [マオ]『マオ』書評集(日本語のみ)

    http://www.21ccs.jp/china_watching/DirectorsWatching_YABUKI/Directors_watching_19.html たとえばベストセラーの上位に並ぶユン・チアン夫婦著『マオ・誰も知らなかった毛沢東』も、敢えて率直に書けば俗悪の部類だ。前著『ワイルド・スワン』は著者三代の家族史を現代中国史に位置づけて好評であった。しかし今回の『マオ』は失敗作と決めつけざるを得ないシロモノだ。大新聞の書評などで中国現代史に疎い素人教授たちが繰り返し「問題作」などともてはやすので、私のところにも真偽の問い合わせが少なくない。 このようなフィクションが史実と誤解されるのは困る。出版社の商業主義に利用されて恥じない素人教授たちの責任も大きい。日に欠けているのは、『ニューヨーク・レビュー』のような独立した書評誌ではないかと痛感する。 21世紀中国総研事務局コ

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  • ロバート・バロー、緑爺さんを語る(ついでに日銀についても少し)。 - 梶ピエールのブログ

    昨日チラッとだけ触れた、1月30日付WJSに掲載されたロバート・バローによる緑爺さん評。なかなか読みごたえがある内容だったのでより詳しく紹介します。 バロー氏は、この18年間、グリーンスパン爺が物価水準を安定させ、FRBの政策への信頼性を高めたことを高く評価する一方で、その政策自体は必ずしも裁量的なものではなく、むしろ「ルール重視政策」に極めて近いものであったことを強調する。 すなわち、緑爺さんによる金利操作が結果的に望ましい結果をもたらしたのは、それが実際のインフレ率や実体経済変数の動向を一定の規則で反映したいわゆる「テイラー・ルール」に基づいたものであったことが大きい、というわけである(テイラー・ルールについてはこれを参照)。そして、「世界経済の皇帝」としての「イコン」にはまだなりえていないバーナンキ新議長が、引き続いてFRBの政策に対する信認を獲得するためには、緑爺さんのもとで必ずし

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  • 『マオ』を読むブッシュ - 梶ピエールのブログ

    http://www.nytimes.com/2006/01/23/politics/23letter.html?_r=1 マクレラン報道官によると、ブッシュ大統領は先週ローラ夫人にこのプレゼントされて以来毎日ベッドタイムで読みふけり、この度読み終わったところとのこと。彼はこのにいたく感銘を受けたようで、ドイツのメルケル首相との会談でも『マオ』のことが話題になったという。 Asked why Mr. Bush liked the book, Mr. McClellan said he would find out, then reported back on Friday that Mr. Bush had told him that "Mao" "really shows how brutal a tyrant he was" and that "he was much more

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  • アカロフ先生講演メモ・まとめ編 - 梶ピエールのブログ

    アカロフ講演メモ、いちおうまとめらしいものを書かないとな、と思いながらどうしようか、と考えていたのだが、気がついたらここでの議論に深く関わってくるようなエントリやコメントがいろんなところで飛び交っているようなので、この際、それらをサルヴェージすることでまとめに代えさせてもらおう。 その前に、これまでのエントリを一応まとめておこう。 http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20051118#p2 http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20051120 http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20051121#p1 http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20051122#p1 http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20051130#p1 まず、稲葉さんに田さんのブログのコメントで言及して

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  • 2005-11-30

    人民元談義に気をとられて間が開いてしまいすみません。 5.自然失業率仮説 さて、今回は講演ののキモともいうべき自然失業率仮説に関する記述である。自然失業率にに関するアカロフ氏の問題意識は、hicksianさんのところで「公平賃金仮説」をめぐる議論の一つとして紹介されていたAkerlof=Dickens=Perryの論文における問題意識とも大きく重なっている(当然といえば当然だが)。以下、hicksianさんのエントリより。 続きを読む ここで出てくるShillerという人はイエール大の教授でbehavioral economicsの中心的な研究者らしい。関心のある方は注目。 http://www.econ.yale.edu/~shiller/ http://www.econ.yale.edu/~shiller/behmacro/

    2005-11-30
  • 梶ピエールのカリフォルニア日記。:アカロフ先生講演メモ・その3

    さて ここ数日は胡耀邦生誕90年記念のイベントにはじまりブッシュ訪中まで、真性中国ヲチャーなら血が騒ぐネタ満載の日々、だったはずなのですが、アカロフの講演をまとめるのと稲葉さんのところの動きid:shinichiroinabaを追いかけるのに気をとられて、ナマの新聞情報などほとんどチェックしませんでした。中国研究者として間違っているでしょうか。とりあえず日NYTの一面の画像を貼ってお茶を濁すことにします(アメリカのメディアはこのシーンが大好きみたいでCNNも何度もこれを流していましたが日のメディアではどうだったんでしょうか)。 あと胡耀邦関係では以下のエントリがお勧め。 http://beijing.exblog.jp/3796509/ http://d.hatena.ne.jp/teratsu/20051119#1132481067 以下も重要な動きだと思われ。 http://new

    梶ピエールのカリフォルニア日記。:アカロフ先生講演メモ・その3
  • 2005-11-21

    少しづつしか進みませんが、とりあえず。 2.恒常所得仮説について。 経済学を専門にしていない人にも読んでいただきたいので、一応簡単に説明しておくと、恒常所得仮説とは、ある経済主体のある期における消費水準は、その人(家計)が生涯において得られるであろう所得水準によって決まってくるという考えである。従来のケインズ経済学では、ある期の消費はその期の所得に消費性向と呼ばれる一定の比率をかけた水準に決まるものとされてきたが、恒常所得仮説は、そのようなケインズ的な消費決定理論が個人の合理的な行動に基づいていない恣意的なものだとして厳しい批判を加えた。個人が合理的に異時点間の効用最大化を行うならば、一時的な所得増加に対してはライフサイクルの中のどの時点で消費したほうがよいかよく考えたうえで消費行動を行うはずだ、というわけである。言うまでもなく、こういった考えからは、政府による一時的な景気浮揚策が行われて

    2005-11-21
  • アカロフ先生講演メモ・その1 - 梶ピエールのブログ

    先日の「追記」に書いたように、イエール大学のウェブサイトに講演当日配布されたものと同じペーパーが掲載されていたようで、たぶん僕よりも正確に読んでくれる人が出てきていろいろツッコミを入れてくれるだろうから、「知的遺産」というような大層なものではなく、議論のたたき台のつもりで気楽に流していくことにしたい。 0.「動機付け」と「規範」 さて、アカロフ氏の講演の主要な内容である、新古典派的な政策命題である「5つの中立性」の批判を検討する前に、その批判の理論的コアとなっている、経済主体の行動原理を考える際の「動機付け」の必要性について述べておこう。 マクロ経済学の「ミクロ的基礎付け」という時、とりもなおさずモデルが個人(あるいは企業)の効用最大化原理に基づいている、ということを意味する。しかし、その際の「効用」とはなにか、という点に関してはそれほど深い考察と議論がなされてきたとは言えず、結局のところ

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  • 2005-10-30

    だいぶ前に「やるぞ」と宣言しておいて一応メモを取っていたStiglitz&Greenwald『新しい金融論』ISBN:4130402099メ、出すタイミングとしてはバーナンキ祭りの後の今しかないように思えてきたので、ここで放出することにする。ネット上で公開するようなレジュメを作るというのは思ったより大変な作業だし、またその公開の場としてブログがふさわしいかどうかちょっと疑問に思えてきた、というのが今まで寝かせておいた言い訳なのだが、とりあえずこの続きをやるかどうかは今回の反応を見て決めたいと思う。まあ、いずれにせよ全部やるつもりはなくて、第3章の後は理論的なコアである5、6、8章あたりを丁寧に読んでおけば十分かなと考えている。もちろん、手伝ってくれる方がいれば大歓迎です。 未入手だが、書に比べニューケインジアンの王道を行っていると思われる大瀧雅之『動学的一般均衡のマクロ経済学』ISBN:

    2005-10-30
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