“きみがかわいそうだと思っているきみ自身を、誰も愛さないあいだ、きみはきっと世界を嫌いでいい。そしてだからこそ、この星に、恋愛なんてものはない” “水のように、春のように、きみの瞳がどこかにいる” “会わなくても、どこかで、息をしている、希望や愛や、心臓をならしている、” “きみが泣いているか、絶望か、そんなことは関係がない、きみがどこかにいる、心臓をならしている” 女性のモノローグが、地下水のように濁流となって、とめどなく流れ出てくる。他者の無意識を呪い、おのれの自意識を呪う。今ここに立つ東京という街を呪い、捨て去った故郷の暗い過去を呪う。つまり、世界を呪う。この女性主人公・美香(石橋静河)は東京で看護師として勤めながら、夜はガールズバーでアルバイトしている。看護師の給料だけでは実家への送金がままならないためである。病院では、自分が看護していた患者が死ぬたびに、遺族から「どうもお世話にな
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