これも某エロゲーに影響されて読んだ本。なのだが,『シラノ』とは大きく毛色が異なる。 著者のジャンニ・ロダーリはイタリアの児童文学作家で,本書も児童文学の体裁をとった短篇集である。思わず「体裁をとった」と書いてしまったのだが,本作に収録された各短編はあまりにもシュールだったり不条理だったりで,純な児童文学として見るには吹っ飛んでいる。大人を笑わせようとしているとしか思えない。そもそもぶっ飛びすぎてて児童に理解できるのだろうか,という疑問もあるが,子供というものは大人が思っているよりも賢いので案外理解できるのかもしれない。落ちも単純な勧善懲悪や教訓が示されるようなことは決してなく,含意には富むものの含意がありすぎて表現しづらかったり,かなりひねくれた教訓が示されていたり,教訓を通りすぎて皮肉か風刺の領域であったりとこちらも一筋縄ではいかない。 いやしかし,徹底して自由と反暴力を訴えている点では
来る月曜日、1月17日に第146回芥川賞・直木賞が発表される。ご存じの通り、出版界最大のお祭り騒ぎの幕開けである。 このときだけはマスメディアが、あるかないかわからない「文壇」をあることにして大騒ぎする。お祭りはいいね、楽しいから。 でもいちばん楽しいのは、自らそのお祭りの中に飛びこんでみることだ。自分でも候補作を読んで「心の受賞作」を決めてみるのである。楽しいよ、これ。 以下に芥川賞候補5作のレビューを記載する。ぜひ、お祭り参加の参考にしてもらいたい。ちなみに予想は大森望・豊崎由美両氏の「メッタ斬り」チームにお任せして、私は楽しむことに専念させてもらいました。ではいくよ。 *1/17の芥川賞直木賞の受賞作発表をうけての感想レビューはこちら 「きなりの雲」石田千(「群像」10月号掲載) 小説の主舞台は築47年という古いアパートだ。主人公のさみ子は、時代の流れに取り残されたようなその建物で暮
第146回芥川賞は円城塔「道化師の蝶」、田中慎弥「共喰い」、同直木賞は葉室麟『蜩ノ記』がそれぞれ受賞を果たした。円城塔は3回目、田中慎弥と葉室麟は5回目の候補での栄冠獲得である。 おめでとうございます。特に「道化師の蝶」は、筆者にとって心の受賞作でもあった。なんだかわが子が表彰状を貰ったような気分です。嬉しいな。 芥川賞候補作全解説はコチラ 直木賞候補作全解説はコチラ 受賞者の記者会見の模様と、全候補作についての解説が昨日のニコニコ生放送で放映された。司会は井上トシユキ、解説者は栗原裕一郎・ペリー荻野の各氏だ。ご覧になった方も多いと思うが(タイムシフト予約で今から観られる人は楽しみにしておいてください)、栗原裕一郎氏による芥川賞解説がすばらしいものだった。あれ、恒例にしてそのうち本にまとめてくれないかな。特に「七月のばか」「道化師の蝶」の両作についての読み込みが深く、たいへん感心させられた
先日、「美学を一から勉強しようとするひとは何読めばいいですか?」って聞かれました。 これまでは「美学研究者なら誰に聞いても同じような答え返ってくるんじゃね?」と思ってて、わざわざ参考文献リスト作ってなかったのですが、昨日amazonで「美学」で検索したら中井正一の『美学入門』とか出てきたんで、やっぱ公の場に出しといたほうがいいかな、と。 では以下、わたしのオススメ本です。 ちなみに、日本語文献です。 英米系分析美学の入門書については、以前書いたので、こちらを見てください⇒★。 はい。 とりあえず、最初はこれ読んで下さい。 西村清和『現代アートの哲学』 現代ア-トの哲学 (哲学教科書シリーズ) 作者:西村 清和 産業図書 Amazonまぁ教科書として書かれてますので、読みやすいですし、素朴な日常的関心から専門的な議論への持って行き方が上手いので、読んでて面白いと思います。 練習問題もついてる
鴻巣友季子(こうのす・ゆきこ) 1963年生まれ。翻訳家、エッセイスト。著書に『本の寄り道』(河出書房新社)など。 ノーベル文学賞が6日、発表された。例えば日本の文学が賞の選考過程に乗るには、翻訳されることが必須の条件になる。発表を機に、文学と翻訳の関係について、文芸評論家の加藤典洋さんと翻訳家の鴻巣友季子さんに語り合ってもらった。 ◇ ■訳されて豊かになるのが世界文学 ――今年のノーベル文学賞は、スウェーデンの80歳の詩人、トーマス・トランストロンメルに決まりました。日本では、1999年に詩集『悲しみのゴンドラ』が訳されています。 鴻巣友季子 毎年のように候補にあがってきた人ですね。 加藤典洋 去年、マイケル・ハイムというミラン・クンデラの訳者でUCLAの教授の話を聞く機会があったんです。スウェーデン・アカデミーの人と会った際、「ノーベル賞をとるには何が一番大事ですか」と尋ねたら、たちど
1 そんなわけで。 チャールズ・M・シュルツ作、谷川俊太郎訳で主婦の友社から出ているスヌーピー(ピーナッツ)の絵本シリーズがある。 参考: スヌーピー - 谷川俊太郎 非公式ホームページ これまで僕はこのシリーズのうち「安心は親指と毛布」「しあわせはあったかい子犬」 「友だちがほしい」を読んできた。今回はその中から「しあわせはあったかい子犬」を取り上げる。 この本は左のページに文章、右のページにイラストが書かれ/描かれた絵本だ。文章は全て「Happiness is 〜(しあわせは〜)」という形式になっている。例えば、表題は以下のような一文であり、 Happiness is a warm puppy. しあわせはあったかい子犬。 この右のページにはルーシーがスヌーピーを抱いているイラストが描かれている。 2 本書の素晴らしさは、「しあわせ」という抽象的な概念を個別具体的に記述している点にある
西谷修-Global Studies Laboratory 時事的なコメント、関連企画のお知らせ、その他西谷の仕事に関連する公開用ノートなどを、雑誌のコラム感覚(?)で公表しています。 もう一度、ジャン-ピエール・デュピュイ『ツナミの小形而上学』(岩波書店)を紹介しておきたい。 破局(カタストロフィ)の預言者はいつも受け入れられない。なぜなら、破局はまだ起こっておらず、それはあいまいな「未来」でしかない。人びとは現在の現実的関係のなかで生きていて、まだ訪れていない「未来」を基準に行動しようとはしない。だから予言は、事が起こったときにしか信じられない。だが、それでは遅すぎるのだ。予言には意味がなかったことになる。予言は人びとに破局を避けさせるためにこそなされるのだが、それが起こってしまっては、予言はその役目を果たさせなかったのだ。 この「予言のパラドクス」から、人はどうしたら抜け出すことがで
新自由主義研究会ジジェクの巻。どうも文句を言うばかりになってしまう格好になったが、今回読んだジジェクの著作、現在への介入としてすばらしいと思う、というのが前提での文句でした。述べた通り、新自由主義のイデオロギー的な閉域が、リベラル資本主義と全体主義(またはそれを含意する社会主義)の鏡像的な二項対立であるなら、ジジェクの「コミュニズム」はその外部として(というか正確にはその外部への志向を稼働させる統制的理念として)おかれる。 コミュニズムというのは、つまり生産するものたちの共同体の理念なわけだが、これはこれまでつぶやいている通り、今回の震災でウィリアムズ的な田舎と都会の問題とともに痛烈に前景化している問題である。生産するものたちの共同体は、「田舎の共同体」であってはならない。つまり、消費者とはべつの一部の生産者の共同体であってはならない。それは田舎/都会、生産者/消費者の分断をこえた、生産す
夏休み課題図書「怖い児童文学」 文=さやわか 今年の夏の特別企画はWEBスナイパーの豪華著者陣による、大人の研鑽に必要な名作・傑作のプレゼン祭り! 夏休みのまとまった時間に改めて、あるいはもう一度触れておきたい作品群をジャンル不問で紹介していただきます。第七弾は、ライター・さやわかさんによる児童文学への誘い。「怖い児童文学」というテーマで6冊を厳選、児童書の枠を超えたパワフルで奥深い作品の力をじっくり解説していきます!! 夏休みと言えば読書感想文、読書感想文と言えば児童文学である。 児童文学は、実に、奥が深い。特に中学生から高校生くらいまでを対象としたヤングアダルト系が台頭して以降はいわゆるライトノベルとの接点も増え、「青い鳥文庫」など古くから続くレーベルにおいても人気作のほとんどはアニメや漫画のようなイラストが使われた、表紙をぱっと見ただけでは小説のように見えないような作品がほとんどであ
子どもと【遠距離親子で?】出直すオトナの人生@埼玉→熊本&北海道 原発疎開&有機農業研修日記→山都町移住日記→身辺雑記。埼玉→熊本への移住当初3歳の息子。コロナ禍の2020年中学入学→離脱→中2~オルタナ→何と北海道の高校へ!小学校補助教員生活10年目。公教育に思うところ多し。内田樹先生とマドモアゼル・愛先生を勝手に私淑。 1月29日(土) 佐々木正美さんの『完 子どもへのまなざし』(福音館書店)を読み進めている。 親や教育関係者の必読書とも言える前著の 『続 子どもへのまなざし』の刊行から10年が経ったが、 著者はその後もご自身の臨床経験を通して、 保育士・幼稚園・学校の先生、福祉に携わる人たちとの勉強会を続けてこられた経験から、 ここ最近の事例が豊富に語られている。 が、その内容はいずれも衝撃的なものばかりなのだ。 例えば、最近、保育園や幼稚園の子どもたちが、 ままごと遊びをするとき、
東野圭吾『麒麟の翼』って映画化されるんだって? いや、映像化はされると思っていたので想定の範囲内。だって、〈麒麟の翼〉という新作の題名が発表されたのも1月に放映された2時間ドラマ『赤い指』の放送時間内だったし(原作にほぼ忠実な良質のドラマだった)。 そういえば光文社で刊行されている単発作品も3作連続で映像化されるとか。有卦に入った状態というのはこういうことを言うのである。 すでに四半世紀以上作家を続けているだけあって、東野圭吾にはずいぶんたくさん著書がある。恐るべきことに、すべての著書が現役。つまり絶版や品切重版未定になっている本が1つもないのだ。これだけ本があるとどれを読んだらいいかわからない、という人も多いはずで、その需要を当てこんだガイド本が多く刊行されている。 しかし今なら無料で手に入るガイドがある。東野の著作を刊行している出版社が制作した「東野圭吾公式ガイド」だ。「作家生活25周
ブログ発想 LP/LD/CD コレクション作業 進行中。ジャズばっかしじゃないかと言われたら身も蓋もない。 飛鳥時代の天文学 河出書房新社 1982/07/20 星の古記録 岩波新書 1982/10/20 古天文学 恒星社厚生閣 1989/03/05 古天文学の道 原書房 1990/05/24 古代の時刻制度 雄山閣出版 1995/04/05 宇宙からのメッセージ 雄山閣出版 1995/12/20 古天文・暦日の研究 小川清彦著作集 皓星社 1997/08/15 定家「明月記」の天文記事 慶友社 1999/01/20 斉藤国治の著作に出会ったのは、地方の工場で勤務していた頃である。労組の書記長からハンドヘルドPCで交代勤務と日勤の平均労働日数を求めたいのだが教えてくれないか。春分・秋分の日は容易に求められず官報で翌年分が公示され決まるという。将来の春分・秋分はともかくとして過去の春分・秋
「ウェブリブログ」は 2023年1月31日 をもちましてサービス提供を終了いたしました。 2004年3月のサービス開始より19年近くもの間、沢山の皆さまにご愛用いただきましたことを心よりお礼申し上げます。今後とも、BIGLOBEをご愛顧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 ※引っ越し先ブログへのリダイレクトサービスは2024年1月31日で終了いたしました。 BIGLOBEのサービス一覧
2009年05月30日08:00 カテゴリ書評/画評/品評Logos 人文科学者がダメな理由がわかる - 書評 - 日本を変える「知」 血、じゃなかった、知、でもなかった、痴の匂いに惹かれて購入。 日本を変える「知」 芹沢一也 / 荻上チキ / 飯田泰之 / 鈴木謙介 / 橋本努 / 本田由紀 / 吉田徹 2009-05-21 - こら!たまには研究しろ!! 他分野の若手論客と話すのは実に楽しいんですよね.シノドスはその機会を十分(過ぎるくらい^^)に与えてくれる点で非常に刺激的です. うん、面白かった。 バカの集まりというのは、外から眺めれば面白いものである。 本書「日本を変える「知」」は、著者の一人である芹沢一也が主催する「知の交流スペース」、「Synodos(シノドス)」におけるセミナーのやりとりをまとめたもの。 目次 - Amazonより 「経済学っぽい考え方」の欠如が日本をダメに
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