この夏報じた昭和天皇「拝謁記(はいえつき)」。5年近くにわたって昭和天皇と宮内庁長官が密室で交わした会話をほぼ丸ごと記録したこの貴重な資料には、これまでニュースや番組で紹介した以外にも興味深い記述があった。遺族の同意を得られた部分に限って、その一端をもう少しだけ紹介したい。(昭和天皇「拝謁記」取材班 社会部記者 鈴木高晴) 私たち取材班は、退位・即位に関する取材を進める中でこの資料にめぐり会い、長年極秘に保管していた遺族との交渉の結果、去年11月に閲覧を許された。 そこには、日本国憲法施行の翌年から日本の独立回復の翌年までの5年半にわたり宮内庁とその前身の宮内府のトップを務めた田島道治(たじま・みちじ)の手によって書きとめられた、戦後占領・独立期の昭和天皇の肉声がびっしりと記されていた。 「支那事変で南京でひどい事が行ハれてるといふ事をひくい其筋でないものからウス/\(うす)聞いてはゐた」