こんばんはウルカ。 もう、じゅうじか。 うかうかしていると明日が始まっちまうな。 明日が始まってしまうまえに、持ち物が持つ者の話をしておこう。 硝子を運ぶ錆びたトラックが、慎重に振動している。 歩道では、アルペジオ専門のギターリストが、奏でては街の騒音にかき消されている。 ビルとビルの谷間に広場があって、街路樹たちの麓にベンチがいくつか並んでいる。 木洩れ日は涼しげな午後を演出していて、ベンチで休む人々はみな黒いシルエットで匿名者になりきっている。 俺は広場の端にあるベンチに居場所をみつけると、湯船に浸かる時のように、じんわりと腰をおろした。 ラガービールの缶以外の持ち物は、スマートフォンと腕時計くらいか。 服や靴を持ち物というのであれば、あと数点ふえるけど。 隣のベンチには、髪の毛を異常にセットアップした男が派手な柄のハンケチでアブラをぬぐっている。 風が、サラサラとふいているが、男の髪
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