もちろん目的があり、行く先々の町で彼はひとを見る。そのプレーがプロとして通用するか否かを見極めると言ったほうがふさわしいかもしれない。高浦己佐緒(たかうら・みさお)は、横浜ベイスターズのスカウトだ。 テーブルに拡げた用紙には、四枚にわたり、100人以上のアマチュア選手の名前が羅列されていた。高校、大学、社会人、そして独立リーグでプレーする選手たちだ。ここから絞り込まれた選手がドラフトで指名されることになる。 リストにざっと目を走らせれば、なるほど、甲子園を沸かせたあの選手の名もあるし、大学野球で活躍したあの選手の名前もある。併記されたポジションと所属チーム、校名の横にはスカウト担当者の名前も綴られていて、数え上げると、高浦が担当する選手の数はおよそ20人にも及んだ。 「その年のドラフトが済むとすぐ翌年の候補選手をリストアップして、20人なら20人に一年間密着するわけだけど、ふるいにかけると