児童養護施設で暮らす子どもたちの大学進学を後押ししようと、青山学院大(東京都渋谷区)は、全国的にも珍しい、施設出身者を対象にした推薦入試制度を導入した。今春、第一号で入学した桜井彩子さん(19)=仮名=は願う。「誰もが夢をみてもいい社会にしたい。制度が広まればうれしい」 (木原育子) 「夢じゃないよね?」。昨年十一月、桜井さんは合格通知を手に、施設職員らと泣きながら喜んでいた。「私は本当に幸運。でも、施設には経済的な理由で将来の道をあきらめざるを得ない子の方が多い」。自分だけがつかめたような幸せに、少し胸が痛んだ。
ぬいぐるみのクマと動物たちの触れ合いを描いた英国の児童文学「クマのプーさん」の著作権保護が五月末で切れ、六月二十五日に角川書店から新訳本が発行される。環太平洋連携協定(TPP)に盛り込まれた保護期間の延長で著作権切れが二十年先に延びることになっていたが、米国の離脱でTPPが発効できず、プーさんの自由化が実現することになった。 TPPにおける著作権の保護延長は、ミッキーマウスなどの人気キャラクターを抱える米国の主張で決まった。これを受けて日本は昨年末に国内法を改正。TPP発効と同時に、TPP参加国以外の国も含めた国内外の作品の保護期間を作者の没後五十年から七十年に延長することにした。 しかしTPPは発効されず、プーさんの著作権は切れた。今後は二〇〇五年に著作権保護が切れたサンテグジュペリの「星の王子さま」を競って出版したように、プーさんの「新訳ラッシュ」がみられる可能性が出てきた。一方、ディ
JR土浦駅北地区の再開発で、今年十一月に移転オープンする市立図書館の概要を土浦市が発表した。新図書館は従来の四・四倍の五千百平方メートルと、県内の市町村立で最大になる。一昨年の市役所の駅前移転と並ぶ中心市街地活性化の目玉事業で、市役所移転後もにぎわいの創出効果が見えない中、市は駅前空洞化の改善に期待をかけている。 (宮本隆康) 県南地域の中心都市としてにぎわった土浦駅前は近年、大型商業施設の閉店が相次いでいる。一九八九年に京成百貨店、九八年に西友、二〇〇四年に丸井が閉店。一三年には駅西口のビルからイトーヨーカドー土浦店が撤退した。 市はイトーヨーカドー跡を買い取り、一五年九月に市役所本庁舎を移転した。庁内に食堂は設けず、職員に周辺の飲食店の利用を促している。移転から二カ月がたった平日の駅西口の歩行者数は、一年前から10%ほど増えた、とする市の調査結果もある。
「ブックハウスカフェ」の社長・今本義子さん(左)とスタッフの茅野由紀さん。奥のソファがカフェとバーのスペース=東京都千代田区神田神保町で こどもの日の五日、書店が集まる東京・神保町(千代田区)に、新刊児童書専門店が復活する。名前は「ブックハウスカフェ」。同じ場所に二〇〇五年から、「本の街」でも唯一の専門店があったが、今年二月に閉店。元スタッフらの熱意で、新たな店としてオープンにこぎつけた。カフェとバーの機能を加え「赤ちゃんから大人まで絵本の楽しみを共有できる場に」と意気込む。(北爪三記) 靖国通りに面した「北沢ビル」(神田神保町)一階。約百五十平方メートルの店内は、中央に約三十人が座れるソファのカフェスペース。両側の書棚に、絵本や児童書を全国でも有数の約一万冊備える。おむつ替えや授乳の場所も確保。夜にはカフェがブックバーになる。
今年の三月十一日、私は大学のウェブサイトに、「東日本大震災から六年目を迎えて」と題したメッセージを載せた。その原稿を書いているときのことだ。私は学生の中にも、六年前の体験から直接間接に影響を受けている者がいるに違いないと思い、「そのことも気にかかっています」と書いた。いつも私は公にする原稿を書くと、総長室長に見せて直すべきところがないか確認してもらう。このときもそうした。 本学では、総長が教員を総長室長に指名している。総長を助けて理事たちの間をつなぎ、まとまりある理事会運営を維持するためである。私が指名した総長室長は教育学の教授であった。 彼女は「災害そのものの問題性とともに、時間がたつ中で災害後のプロセスの問題性が浮かび上がってきている。痛んでいる人を、さらに痛めるのはなぜか? エネルギーという大きなシステムの問題に加えて、脅かされた人権が今どうなっているかという視点があると、より良いか
「戦艦武蔵」や「三陸海岸大津波」などの作品で知られる作家吉村昭さんの足跡を展示する「吉村昭記念文学館」が26日、出身地の東京都荒川区にオープンする。 文学館は、同区の中央図書館や子ども施設が一体となった複合施設「ゆいの森あらかわ」の2、3階部分に設けられる。文学館のエントランスには、吉村さんの著書の表紙画像を、原寸大で全作品展示。随筆「東京の下町」などの直筆原稿や日記のそれぞれのレプリカなども展示する。一角には、書斎を再現し、愛用した椅子に座ることもできる。入館無料。 吉村さんは1927年、現在の荒川区東日暮里で生まれ、18歳まで日暮里で過ごした。66年、「星への旅」で太宰治賞受賞。取材と調査に基づく記録性の高い作品を数多く発表した。著書に「関東大震災」、「ポーツマスの旗」、「桜田門外ノ変」、「彰義隊」など。2006年、79歳で死去した。
習志野市は四月から、公文書の字体をゴシック体に統一する。弱視など視覚にハンディのある人や高齢者はもちろん、誰にも見やすい字体として採用した。 生活のあらゆる場面で障害のない人と同じレベルの情報を提供するため、手話や点字など障害に応じた情報取得・コミュニケーションを保障する「心が通うまちづくり条例」が四月に施行されるのに合わせた。 ゴシック体は明朝体など他の字体より線が太く、遠くからでも文字と認識しやすい。県の「障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン」も、「ゴシック体は太さが均一なので読みやすいと言われています」としている。「市の公文書は慣例で明朝体を使っていた」(同市総務課)が、四月から作成する公文書では原則、ゴシック体を使うことにした。
図書館の利用者情報はどこまで守られるべきか-。図書館での盗難が急増する明治大が、入館者記録などを警察に提供したことが波紋を広げている。図書館は、戦前に国民の思想統制に加担した反省やプライバシー意識の高まりから、日本図書館協会も「捜査令状がない場合は提供しないことが望ましい」との見解を示す。窃盗被害の防止と利用者情報の保護の板挟みで、大学は苦慮している。 (皆川剛) 「注意喚起で被害を減らせるかと考えたが、増え続け、もはや異例の事態だ」。明治大図書館総務事務室の菊池亮一事務長は険しい表情で語る。和泉キャンパス(東京都杉並区)の図書館では、一昨年度まで年数件だった被害が、昨年度二十七件、本年度は半年で既に四十一件相次いでいる。 大学などによると、離席中や寝ている時にかばんから財布が抜かれたり、かばんごと持ち去られたりするケースが大半。現金やカードが抜かれた財布やかばんはその後、キャンパス内のご
樋口一葉ゆかりの「旧伊勢屋質店」(文京区本郷)を、区の補助で跡見学園女子大が購入したことで、地元の人たちは安堵(あんど)の表情を浮かべた。取得発表の十二日、旧伊勢屋前の菊坂は、地下の配管工事中。付近は昔ながらの木造家屋が立ち並ぶ一方で、新築の住宅も建ち始めている。 一葉が住み始める前の一八七七(明治十)年ごろから祖父が商売を始め、旧伊勢屋の斜め向かいで「御菓子・喫茶ゑちごや」を営んでいる太田泰さん(78)は「菊坂にあの建物は欠かせない。移築の話があったり、立ち消えになったり、心配してたんだが、良かったね」。近くのパン店主も「最近では大型店の進出や消費税の影響で、店を畳んでしまう方もいる。伊勢屋さんの保存で街が活性化すればいいね」と期待をかける。 ベビーカーを押して通りかかった主婦(37)は「文(ふみ)の京(みやこ)と言うだけあって、区内に作家の旧跡が多いことは知っていた。保存が決まって良か
常陸大宮市で廃校になった小学校舎を再利用した市文書館が完成し、8日に竣工(しゅんこう)式典が行われた。江戸-明治時代の古文書9000点を含む約3万1000点の文書が所蔵されており、10日に開館する。行政の公文書を保存・公開する公文書館を開設したのは県内自治体で初めて。廃校舎活用のモデル例としても注目を集めそうだ。 (成田陽子) 文書館として生まれ変わったのは、同市北塩子の旧塩田小学校。一九八八年に旧大宮町立小学校として建設されたが、児童数の減少などにより二〇一〇年三月に閉校となった。地域に親しまれた施設で、建物の傷みも少なかったことなどから、文書館として改修することが決まった。 改修工事は昨年十二月に着工。鉄筋コンクリート三階建ての校舎をそのまま使い、一階の校長室を事務室に、職員室と保健室を資料室に、二階と三階の教室は保存書庫や作業室にするなどの改修を行った。また、外壁全面を再塗装し、日差
トップ > 特集・連載 > 変わる知の拠点 > 記事一覧 > 記事 【変わる知の拠点】 <第2部>「民」がつくる図書館(4) 雑誌スポンサー制度 Tweet mixiチェック 2013年9月17日 スポンサーのついた雑誌。企業名が表紙に示してある=台東区立中央図書館で <わたしたちはこのまちで社会貢献活動をしています>。東京都台東区のかっぱ橋道具街。生活雑貨を扱う「カケス雑貨店」のレジ奥に、クマのイラスト入りの小さなポスターが張られている。この店が区立中央図書館の「雑誌スポンサー制度」に参加したことを知らせる内容だ。 「図書館がすぐ近くなので。本を借りたついでに立ち寄ったというお客さんが、以前からいたんです」 タオルや食器など「長く使える国産品」の並ぶ店内。店主の妻の佐藤直美さん(43)が、棚にカラフルなポットを並べながら話す。 制度は、台東区が今年四月から取り入れた。区内の企業または個
トップ > 特集・連載 > 変わる知の拠点 > 記事一覧 > 記事 【変わる知の拠点】 <第2部>「民」がつくる図書館(3) 全国の蔵書 一挙検索「カーリル」 Tweet mixiチェック 2013年9月17日 「カーリル」を開発した吉本龍司さん 最近、話題になっている村上春樹の新作。ファンでなくても、図書館で借りられるなら読んでみたい人も多いだろう。だが、どこにあるのか。そんな時、頼りになるサイトが日本最大の図書館蔵書検索「カーリル」だ。 ホームページは文字の入力ボックスが一つだけ。うろ覚えのタイトルを「多崎つくる」と書き込むと、すぐに検索は終了し、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、記者の自宅に近い七つの図書館にあった。ただし、いずれも貸し出し中だった。 カーリルを使えば、全国の図書館の蔵書を一気に調べられる。自宅や職場近くの館をいくつか登録しておき、帰宅途中、希望する本
トップ > 特集・連載 > 変わる知の拠点 > 記事一覧 > 記事 【変わる知の拠点】 <第2部>「民」がつくる図書館(2) 県立館統合の動き Tweet mixiチェック 2013年9月17日 科学関係の雑誌が並ぶ神奈川県立川崎図書館=川崎市内で JR川崎駅から徒歩十五分ほど。雑居ビルのようにも見える古い建物がある。神奈川県立川崎図書館。中に入ると科学誌や見慣れない専門書が並ぶ。ここは全国でもまれな産業と科学技術に特化した図書館だ。 「富士通に東芝、資生堂…。川崎周辺には、日本を代表する企業の研究所が、たくさんあるんです。研究者は、必ず先行事例を調べるでしょう。二十五万冊の専門書を一覧できるのは、産業政策としても価値が大きい」。行政機関などのコンサルタント業に携わる岡本真(まこと)さん(横浜市)は、川崎図書館についてこう語る。 岡本さんは、市民で望ましい図書館のあり方を話し合おうと昨秋
トップ > 特集・連載 > 変わる知の拠点 > 記事一覧 > 記事 【変わる知の拠点】 <第2部>「民」がつくる図書館(1) 人が集まる民間図書館 Tweet mixiチェック 2013年9月17日 地域の交流空間として、お菓子や料理を持ち寄って子どもたちと参加できる図書館バー 「公立図書館の役割って何だろう」。図書館を利用する市民の中から、そんなことを考える人が増えてきた。夕方の定時には閉館し、館内での飲食はもちろん、大声も禁止。一方で、無料貸本屋との批判もある従来の“知の拠点”のあり方をあらためて考えようとしているのは、何も図書館側の人ばかりではない。民から出てきた新しい図書館像を探る試みを紹介する。 千葉県船橋市。駅前にほど近い事務所が、地元のNPO「情報ステーション(岡直樹代表)」が運営する民間図書館・船橋北口図書館だ。書棚は村上春樹の『1Q84』などの小説や幼児向けの絵本で埋め
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