キャリアラダーとは何か [著]ジョーン・フィッツジェラルド[掲載]2008年11月16日[評者]耳塚寛明(お茶の水女子大学教授・教育社会学)■賃金上昇へのハシゴをどう作るか かつてアメリカは多数の底辺労働者にとってさえ、上昇移動の途(みち)が開かれた社会だった。ところが80年代に賃金の二極化が進み、職業構造はピラミッド型から画びょう型(表紙の図参照)へと変容した。低スキルの労働者にとって上昇の機会は閉ざされ、貧困から脱出できなくなった。 キャリアラダー戦略はこの状況に対する処方箋(せん)である。アメリカではここ10年ほどのあいだに何十ものキャリアラダー・プログラムが立ち上がったという。キャリアラダー戦略とは、つづめていえば、仕事をスキルレベルに応じた複数の職階に分け、専門性と賃金を高める上昇移動のハシゴを創出し、人々を賃金のよい仕事にキャリアアップさせる戦略である。本書は医療、保育、伝統的