いつもより上等の昆布買っちゃった。藤井はそう言って調理用の鋏を使う。四角いまま鍋底に敷くので、切れ目を入れなくていいのと私は尋ねる。そのほうが出汁が出るって何かで読んで、私そうしてるんだけど。 年始休暇の最後の日、三人で鍋を囲むことになった。私たちは独身または結婚相手が海外赴任中の擬似的な独り身で、その日は予定がなかった。お正月という家庭にとっての聖なる日に、と私は言った。ひとりの家庭をたのしむもよし、ひとりを持ち寄るのもまた、よし。彼女たちは持ち寄りに賛成した。 美濃部が到着し(結婚して田中になったけれども、私たちは無遠慮に旧姓で呼ぶ)、冷えてるよと言って優雅なラベルの瓶を手渡す。それをあらためた藤井がフルートグラスを取りだすので、なんだってそんなものが一人暮らしの家にあるのと、あとのふたりで囃した。藤井は澄ました顔で、もらったんだよと言う。私が泡のたつワインを好きだから。マキノや美濃部
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