追悼・駒沢敏器さんへ 今から数年前のこと。渋谷のタワーレコードがまだリニューアルする前で、7階フロアには膨大な数の書籍や洋書が売られていた。ある日立ち寄ってみると、その一角に「旅と生き方」に関する本がレイアウトされた小さなコーナーをたまたま見つけた。 並んでいるのは国内外のエッセイやノンフィクションや小説で、原点とも言えるソローの『森の生活』、オーストラリアのアボリジニの伝説を題材にしたブルース・チャトウィンの『ソングライン』、クリストファー・マッカンドレスのアラスカの足跡を綴ったジョン・クラカワーの『荒野へ』など。さらに日本人作家としては嬉しいことに駒沢敏器の本も陳列されていた。 「駒沢さん、元気にしてるかな」。確か『アメリカのパイを買って帰ろう』か『語るに足る、ささやかな人生』を手に取りながら、そんなことを思った。駒沢さんとは随分会っていない。それからしばらくして、駒沢さんが亡くなった