他人に何かを依頼するとき、信頼できる相手にすべてを任せられれば、これほど楽なことはない。自分の手間は省けるし、精神的負担も軽くなる。「自分は信頼できる人間と一緒に物事を進めている」という安心感や満足感もある。 しかし、任せきりにすると思わぬスキができる。任せられた相手が「何をしてもバレにくい」と感じると、フツーの人間の頭にはつい出来心が生じてしまうものだ。横領や詐欺などの不正は「信頼して任せきりにする」場面でよく起きるのである。 依頼主の「全幅の信頼」に乗じて横領した弁護士 約4億7000万円の詐欺と業務上横領の罪に問われた元弁護士・T被告の第2回公判が、福岡地裁で先日行われた。具体的な容疑は「依頼人からの預り金の着服」「仮処分申立ての保証金名目での詐欺」などである。 預り金の着服は、例えばこんな手口で行われる。あなたが家族経営する会社が、主要受注先の破綻により連鎖倒産に追い込まれたとしよ