「病気の後の活動が認められたと思う。障害を持ちつつ生きる道を模索する人たちの力になれば」と顔をほころばせる。 東京芸大を卒業後、1960年代にフィンランドに拠点を移し、ピアニストとしての活動歴は40年以上。2002年、同国での演奏中に脳出血で倒れ、右半身の自由を失った。両手での復帰を目指してリハビリに取り組んだが、思うように回復しなかった。 そんな時、米国の音大で学んでいた長男がそっと置いていってくれたのが、英国の作曲家ブリッジの譜面。戦争で右腕を失った友が演奏出来るように作曲されたものだった。弾いてみて、音楽の完成度に驚いた。「右手がなくても音楽が半分になったわけじゃない」と吹っ切れた。ピアニストとして04年に復帰した。今は1年間のうち夏をフィンランド、それ以外を日本で過ごし、「左手のピアニスト」として各地で精力的に演奏している。 「障害があるが、音楽が好き」。こうした手紙やメールが数多