かつ、その意味というのは、人と物とのあいだに相互作用的に存在するのです。 読書というのは、読む前に何かが始まっていると思ったほうがいい。それを読書をするときだけを読書とみなしているのが、とんでもないまちがいです。 と、松岡正剛さんが『多読術』のなかで読書について述べていますが、これは単に読書に関してだけではありません。物を使用するという場合でも同じです。 物の使用というのは、使用する前に何かが始まっていると思ったほうがいい。それを使用するときだけを物を使用しているのだとみなしているのが、とんでもないまちがいなのです。 使用する前にはまだ意味が生まれていません。ただ、使用の瞬間に突然、何もないところから意味が生まれるというのでもない。使用する時点で人は自分が過去に利用してきた別の人工物と比較しながら、新しい人工物の意味を推測します。それが使用のスタートであり、物の意味のはじまりです。 意味を