もしも今、どこかからアンケート用紙が来て、日本語でうたわれた作品の中でいちばん好きな歌をひとつ挙げてください、と訊かれたら、きっとすごく迷うと思うのですが、たぶん『さくら貝の歌』と答えるかもしれないと思います。 さくら貝の歌 作詞土屋花情 作曲八洲秀章 うるはしき桜貝ひとつ 去りゆける君に捧げむ この貝は去年の浜辺に われひとり拾ひし貝よ (昭和18年完成) (昭和24年7月発表) この歌は、八洲氏が鎌倉の浜辺を散歩していて詠まれた一首、 わが恋の如く悲しさやさくら貝かたひらのみのさみしくありて を友人花情氏に見せ、これを基に付曲できる詩を、と求められて作られたものらしいです。完成が戦時中だったため、時局にそぐわないから、と作者たちによってすぐの発表は見送られ、戦後、ラヂオ歌謡の一曲として発表。たちまち日本中で愛唱されるようになったそうです。 去年、とあるラヂオ番組のなかでの話だったと思う