日本を代表するメロドラマのタイトルをほぼそのまま引用する劇場用アニメーション『君の名は。』が、若い世代の観客を中心に大ヒットしている。この事態は、今までの新海作品を見ていて、その作風を知っている者なら誰もが驚くはずだ。 ときに人は、夕暮れや朝焼けの風景を眺めながら、ムードに酔ってポエムのような感傷的セリフをつぶやいたり、手紙やメールを送ってしまうことがある。そういった状態は通常、いったん時間をおけば「治る」ものであり、思い出して「こんなこと言わなければ良かった…」と落ち込んでしまった経験が、誰にでもあるのではないだろうか。そこで反省せずに、あまつさえその感覚をアニメーション作品にまでしてしまうのが、新海誠監督だ。 本作の冒頭、おちてゆく星が空に作り出す帯に太陽光があたり、細い影が出来ていく幻想的な光景に登場人物の独白が被さってゆくシーンに代表されるように、新海作品のなかでは、キャラクターの