転移感情は自然発生的なものだろうか? フロイトの話から本稿のテーマに移っていこう。治療において感情はどのような意味や役割を持っているのか。フロイトはこの件について明白な見解を持っていたようである。患者は精神分析的な枠組みの中では治療者にある種の要請の感情、すなわち転移感情を有する。しかもこれは印象だが、患者は全員、デフォルトで持っているかのような書き方である。もちろん治療を求める際には、治療者への理想化はあるかもしれない。でもフロイトはそれをあたかも恋愛感情のような形で患者の中にすでにあると思っているところがある。そもそも患者は治療者に関心を持っていないことだってあるのではないか、と尋ねたくなる。しかしフロイトはこう言いそうである。「もちろん意識化されていないこともあるでしょう。それを抑圧や抵抗と呼ぶのです。」そうして付け加えるだろう。「治療者が自分の姿を現さず、患者の愛の希求を満たさない