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「障害」の概念とその表記の仕方 この問題について検討する前に、そもそも障害や疾患とは何をさすのかについて少し論じよう。最近ではわが国では少なくとも精神科領域では「精神疾患」の代わりに「精神障害」の表現が用いられるようになって久しいが、それは欧米の診断基準である DSM や ICD が標準的に用いている “disorder”(通常は「 障害」と訳される)という呼び方に対応して用いられているという事情考えられる。しかし「精神障害 」の「害」の字は明らかにマイナスイメージが付きまとうということから、最近では代わりに「障碍」ないしは「障がい」という表記をすることが多くなってきた。(ただし「碍」という文字の語源を調べると、これにも同様にマイナスな意味が含まれるようであり、果たして「障碍」への置き換えには意味があるのかという疑問も生じる。) そして最近はこの disorder がさらに「症」と訳される
「部分としての心」は存在するのか? 本書で取り上げている交代人格の人格としての在り方という問題意識は、しかしそれより一段階上のレベルの問題と関連している。それはそもそも心とは部分でありうるか、という問題だ。つまりこれは交代人格に限らない心の在り方を問い、それが基本的に部分ではありえない存在であり、統一体としての要件を備えているはずであることを示したいのである。すなわち心とはすなわち部分ではありえないという事を示すことで、交代人格も当然ながらその例外ではないから、部分ではありえないという論法を取ろうと考えているのである。だから本章の記述は交代人格よりは人格一般、心一般をテーマとしていることを最初にお断りしたい。 さて部分としての心、という事で私が思い出すのは、Shel Silversteinの「僕を探しに The Missing Piece」という絵本である。主人公はいつも何かが欠けていると
DIDの裁判 最近の動向 再び上原氏の2020年の論文に戻ってみる。そこで上原氏が中心的に論じているのが、平成31年3月の覚せい剤取締法違反事件である。この裁判ではDIDを有する被告人は覚せい剤使用の罪で執行猶予中に、別人格状態で再び使用してしまったという。そして原級判決では被告人に完全責任能力を認めた(つまり全面的に責任を負うべきであるという判断がなされた)が、控訴審では被告人が別人格状態で覚せい剤を使用したために、心神耗弱状態であったと認定したのである。 ちなみにDIDにおいて責任能力を認めるか否かという議論には、精神医学的な見地が大きく関係している可能性がある。そして裁判においても、精神科医による精神鑑定の見解をできるだけ尊重するという立場が最高裁において下されているという(上原、2020)。この上原氏の紹介する覚せい剤使用のケースではそこで私的鑑定を報告した精神科医の意見が尊重され
DIDにおいて刑事責任能力が問われる状況のプロトタイプ さてここからが本題である。日本の裁判においてDIDの当事者の責任能力はどのように考えられ、扱われているのだろうか? 上原氏の解説によれば、DIDの責任能力が問われる判例は増加傾向にあるようだ。わが国でDID を認めたうえで刑事責任を判断したものとしては、現時点(2020年)で入手可能な十三件のうち半数以上が、過去五年以内に出されたものであるという(上原、2020)。そしてそこにみられる傾向として、DIDが被告人の刑事責任能力自体に影響を与えるものと判断された例が出てきている。 このような傾向は私は基本的には好ましい方向に向かっていると考える。少なくとも従来はDIDにおいては完全責任能力が認められるという方針で一貫していた。そしてさらにそれ以前は被告がDIDに罹患していたということ自体が認められていなかった可能性がある。しかしDIDの責
おれは医者ではない。医学生でもない。患者である。精神障害者である。双極性障害(躁うつ病・双極症)II型である。手帳持ちである。「当事者」と呼ばれる人間である。 おれはおれの病気について語るのが好きだ。 自分に興味があるというか、自分に取り憑いた病気に興味があるというか、なんと言うていいかわからないが、とにかく自分の病気について発信したいという気持ちがある。 そして、発信する前に、自分の病気について知りたいという気持ちがある。 当事者の、そして医師の話を聞きたいと思う。なので、いろいろな精神病の本などを読む。 これがおれだけの話なのか、双極性障害の人間ならではなのか、病気になった(障害を持った)人間ならではなのかはわからない。 というわけで、精神科医の書いた本などを読む。 すると、たまに出てくる名前がある。神田橋條治である。 最初に見かけたのは中井久夫の本だったと思う。 『双極II型障害とい
Charcot はその意味ではそれまでは詐病扱されていたヒステリーを医学の俎上に載せたという功績があった。歴史上はじめてヒステリーが正当に扱われたのである。そしてここにはそれが疾病や障害として扱われることが差別からの解消であったという事になる。ただしそれでもCharcot は「結局ヒステリーはいつも、性器的な問題なんだよね」という言葉を残して、一種の偏見の根を絶やさなかったことも知られる。 解離性障害が障害としてみなされない問題にはもう一つの文脈があった。それがPTSDや戦争神経症の処遇である。これも一種の「仮病」として扱われるという時代が長く続いたのだ。そしてその根底にあるのが疾病利得の問題であった。疾病利得とは病気になることで患者自身が得るものであるが、Freud はそれを一時的なものと二次的なものに分けた。このうち二次的なものとは傷病手当や保険金や、戦場に赴くことの回避などであり、周
Putnam はこの論文で「状態変化」障害 state-change disorder という概念にまで言及して、そこには双極性障害やMPDが入るとする。そしてそれが乳幼児に見られる意識状態state of consciousness に発想を得ているとする。そしてそれは「繰り返され概ね安定した 生理的な変数群や行動群のパターン群の付置constellation (Prechtl, 1968, p.29 A constellation of certain patternsepeat themselves and which appear to be relatively stable)」としてもっともよくあらわされるという。 Prechtl, HFR Theorell, K, & Blair, AW (1968) Behavioral state cycles in abnormal i
Putnamの離散的行動モデル ここでこのPutnam 先生の議論の背景にある離散的行動モデル(discrete behavioral model, 以下DBM)について少し見てみたい。 Putnam(1997)はこのDBMで、人間の行動は不連続的で、一群の状態群の間を行き来することと捉えている。DIDの交代人格もその状態群の中の1つであるとする.交代人格という状態は,その他の通常の状態とは違い虐待などの外傷的で特別な環境下で学習される.そのため,交代人格という状態とその他の通常の状態の間には大きな隔たりと,状態依存性学習による健忘が生じると考える. Putnam, FW (1997) Dissociation in Children and Adolescents: A Developmental Perspective. Guilford Press: New York. 中井久夫(訳
Putnamの離散的行動モデル Frank Putnam 先生の議論についてはかつて触れているが、ここで取り上げたいのは、彼の離散的行動モデルである。交代人格を一つの人格ではなくて部分と見なすという傾向の一つの源はこのモデルに見出すことが出来る。そこで本章ではこのモデルについて解説をしたい。 Putnam のあまり引用されていない論文に以下のものがある。 「ディスカッション:交代人格は断片か、虚構か? Discussion: Are Alter Personalities Fragments or Figment」(A Topical Journal for Mental Health Professionals Vol 12, 1992, Issue 1: pp.95-111. という論文である。この論文はそのタイトルにもあるように、ある臨床家(Dr. Lyon)が提出したケースに対す
link.springer.com 概要 まとめ 全体として、ビデオゲームを用いた介入は、うつ病性障害の症状の軽減に有用かつ効果的であった。研究のうち7件は過去5年間に発表されたものであり、これはうつ病に対するビデオゲームを用いた介入に対する研究の関心の高まりを反映している。全体として、アドヒアランスが報告された場合、受容性と実現可能性の割合は高かった。 先行研究の概要 ほとんどのビデオゲームは、うつ病性障害の治療用に特別にデザインされたもの(すなわち、「シリアスゲーム」)で、市販されていないものであったが、そのうち2つのゲームは、人気のある市販ゲームをベースにしていた。Xbox 360のDance Central for Kinect [30]とNintendo WiiのSportsゲームパッケージ[31]である。そのうち2つは、カジュアルなビデオゲームを使用した[32, 33]。ビデオ
games.jmir.org Kowal, Magdalena, Eoin Conroy, Niall Ramsbottom, Tim Smithies, Adam Toth, and Mark Campbell. 2021. “Gaming Your Mental Health: A Narrative Review on Mitigating Symptoms of Depression and Anxiety Using Commercial Video Games.” JMIR Serious Games 9 (2): e26575. 精神症状に用いられるオーダーメイドゲームは高価でエビデンスが十分にない 多くのオーダーメイドのビデオゲーム(例:Pesky gNATsゲーム)は、従来の治療法の代替手段として有益であると思われる [55,56] 。とはいえ、これらのゲームのうち市販さ
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR) 国立大学法人東京大学 学校法人昭和大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 本研究成果のポイント 自閉スペクトラム症(ASD)の状態を反映するバイオマーカーはこれまで存在せず、生物学的・脳科学的に根拠のある診断・治療は困難だった。 高い次元を持つ脳回路データについて、学習のためのサンプル数が数百以下と少ない場合にも、正しく汎化[1]できる先端人工知能技術を開発した。 人工知能技術により、ASDを脳回路から見分ける診断オッズ比[2]31.1のバイオマーカーを世界で初めて確立した。ASDに特徴的な脳内の機能的結合が少数発見され、これにより国と人種を超えたASD当事者・定型発達者(非当事者)の高精度な判別に成功した。 同定された機能的結合を治療の対象とする臨床研究を進めている。人工知能技術を複数の精神疾患に応用して、生物学的観点から再定義できる。発
仲間とともに、赤ちゃんのいる老人介護デイサービスを運営しています。 もうすぐ丸4年を迎えるので、自分たちにとってはいたって普通ですが、いろんな地方からお起しになる見学者の方々がびっくりしたり感動したりしていることを、誰も書かないので、初心に帰りながら自分で書いてみます。 すごいところ「赤ちゃんがいる」 赤ちゃんを連れて、スタッフは出勤してきます。普通です。現在は、運営しているメンバーも含めると、半分くらいが赤ちゃんを連れて仕事にきます。 基本的には、0歳から3歳までを赤ちゃんって呼んでます。4歳からは幼稚園に通う感じですね。 別に、託児所併設とかではなく、一緒にいます。 なので、利用者であるおじいちゃんやおばあちゃんも、スタッフの赤ちゃんのことを見守ったりあやしたり、一緒におやつをつくったりします。近くの公園にも一緒に散歩に出かけます。 祝日や夏休み、冬休みは、大きな子たちも来ます。なので
2019年10月1日に兵庫県立総合リハビリテーションセンターならびにリハビリテーション中央病院が開設50周年を迎えるにあたり、小児部門を改編し、名称を「子どものリハビリテーション・睡眠・発達医療センター」とすることにいたしました。小児整形外科部門、肢体不自由部門、睡眠障害・発達障害部門の3部門からなる子どものためのセンターです。 チーム医療を一層推進し、脳性麻痺、肢体不自由、睡眠障害、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、発達性協調運動症、限局性学習症などのリハビリテーションを行います。 医療とは、患者さんのからだ・いのち・こころ・人生を支え、個人が尊重され、安定的で文化的な生活ができる“ゆたかな地域社会”を創るための大切な制度です。 私たち職員は、子どもの育つ力を信じ、子どもが自分らしい人生を歩んでいけるよう、患者である子ども本人・保護者・地域の人々(医療、介護、保健、福祉、教育、雇用な
オープンダイアローグ(開かれた対話)とは,フィンランド・西ラップランド地方にあるケロプダス病院を中心に,1980年代から実践が続けられてきた精神科の治療的介入の一手法である。できるだけ入院・薬物治療を行わず“対話”の場を重視するという一見単純な手法が,極めて良好な治療成績を挙げており,現在,世界中から注目を集めている。対話を重視することで,なぜ,ここまでの成果を挙げることができるのか――。本鼎談では,オープンダイアローグの手法から,精神医療における対話の潜在的な可能性を探った。 斎藤 依頼の電話を受けてから24時間以内に治療チームを組み,危機的状況が解消するまで患者さんや家族,関係者たちと毎日のように対話を繰り返す。オープンダイアローグというのは基本的にはこれだけです。入院と薬物治療によって統合失調症の治療に携わってきた医師ほど,この治療による成績(MEMO)に衝撃を受けるのではないかと思
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