0 ――そうして、極東の地に一つの奇跡が舞い降りた。 天の杯。第三の魔法。その成功例たるシロウはこれからどんな人生を歩むのだろうか。願わくは、彼の姉として願わくは、平凡で和やかな道を進んでほしい。そうすればきっと、シロウは幸せになれると思うから。 1 出来損ないのアインツベルンはぺしゃんこになった。大空洞は崩壊した。大量の岩石にのしかかられたわたしは、それでも死ぬことすら許されなかった。 失敗した呪は術者に帰る。もとよりわたし一人で魔法を制御できるはずもなかったのだ。シロウという器をあふれた奇跡の奔流は、手近にあった人形の体中を無秩序にかき混ぜた。その結果が醜悪な命。生きることもできず、死ぬことさえできない、肉と魂の混沌たるキメラ。そんな肉塊が、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの成れの果てだった。 なんという奇跡。偉大なるかな、大いなる魔法。わたしは老いも病も克服した。きっとこのま