ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの作品には、モラルやタブーを扱った硬派なイメージが強いのですが、またロマンティックでリリカルな一面をも持っています。そんな一面がよく出た作品集が、『たったひとつの冴えたやりかた』(浅倉久志訳 ハヤカワ文庫SF)でしょう。 舞台は未来、人類とエイリアンとが知り合った時代。異星種族である「コメノ」のカップルが、これまた長い寿命をもつ種族である司書のモア・ブルーから、古い時代の人類の記録書を紹介される、という枠で語られる連作短編集です。 『たったひとつの冴えたやりかた』 資産家の娘コーティー・キャスは、宇宙に憧れていました。親から買ってもらったスペース・クーペでの旅行中に、彼女は行方不明だった宇宙船に出会います。乗務員は死亡していましたが、その原因は寄生タイプのエイリアンに脳を食い尽くされたためでした。そしてコーティーの脳内にも若いそのエイリアンが寄生してしまい