一歩客車の中に足を踏み入れると、半世紀以上前にタイムスリップしたかのようだった。客車を新造したSLやまぐち号。「1カ所でも手を抜くと、他の場所も『これでいいか』となる」。洗面台にある「痰壺(たんつぼ)」。布で覆われていた屋根の質感を出すため、使ったテクニック。鉄道ファンをも納得させた客車の再現には、現代の技術者が守る「物づくり」へのこだわりがあった。 SLやまぐち号の客車は、2017年9月の導入以来、「見た目はレトロ、中身は最新鋭」と、乗客やSLファンの人気と高い評価を集めている。 2号車から5号車の普通車は、4人掛けのボックス席に木材が使われている。側面や床も木目調。グリーン車の1号車には、じゅうたんが敷かれていて、ソファのような深紅の椅子が並べられていた。最後尾には展望デッキがあり、風に当たりながら沿線の景色を楽しむことができる。いずれの客車も、SL全盛期だった昭和初期に製造された客車