グーグルには二つの顔がある。 一つ目の顔は「世界中の情報を整理し尽くす」というビジョンを体現する検索エンジンの会社、ネット産業の覇者で超高収益企業という顔である。 「新しい時代を象徴するグーグルとはいったい何者なのか。次号から何回かにわたって、このテーマをめぐって考えていきたいと思う」 連載第八十八回(二〇〇四年一月号)でこう書いて以来、「何回か」ではぜんぜん終わらず、「グーグルが何者なのか」は本欄におけるメインテーマであり続けている。おそらくこれからもかなり長くそうであろう。 二〇〇四年初頭から、同年夏の株式公開を経て、〇六年秋のユーチューブ買収にいたる、このわずか三年間のグーグルの急成長は、ビジネス史に類例を見ない勢いで、直近4四半期の売上高合計はついに一兆円を越えてしまった。ハードウェアの量産もしない、フランチャイズ方式での全世界展開もしない、巨大事業の買収もしない。それで創