「日銀が国債を全て買い切れば、「国民負担無し」で財政再建が終了する」といった主旨の言説がネット上で流布している。だが、これはウソで誤解である。以下、順番に説明しよう。 第1の理由は、金融政策は資産の「等価交換」で、日銀が買い取る国債を支えているのは主に我々の預金だからだ。仮に日銀バランスシートの大部分を占める日銀保有の国債と日銀当座預金(準備)を互いに相殺すれば、我々の預金の一部が消滅する。この意味を理解するため、以下の簡易ケースで考察してみよう。 現実の経済にはいくつもの異なる家計や企業、銀行などの金融機関が存在しているが、政府部門と日銀のほか、一つの民間銀行しか存在しないものとする。また当初、政府部門、日銀、民間銀行のバランスシートは以下の通りとする(注:簡略化するため、日銀が保有する国債以外の資産や自己資本のほか、民間銀行の自己資本などは無視する)。 日銀が国債を償却すれば民間の預金