2010年代ヒット漫画の台詞回しには、意識の流れを見せる「饒舌」と、言葉の不在が際立つ「沈黙」という2つの特徴が見られるという。一体どういうことなのか、具体的な作品を交えながら論じる。 (『中央公論』2021年10月号より抜粋) 『鬼滅の刃』とヒカキン 2010年代の漫画にはどんな特徴があるだろうか。すべてを読み通すことができないほど多数出版されていることを思えば、一概に語れるものではない。だが、目立った傾向を取り出すことは可能だ。ここでは、台詞回しに注目することにしたい。 ここ数年で最も話題になった作品の一つである吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)の『鬼滅の刃』(2016ー20/発表年〔以下、同〕)には、登場人物が、自身の状態や考え、感覚などそのまま語り伝えるという特徴がある。一例を挙げよう。「視界が狭まる 目が見えづらいぞ 呼吸を・・・乱発しすぎたせいか? 耳鳴りが酷い 体中に激痛が走って
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