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ブックマーク / shorebird.hatenablog.com (33)

  •  「ゴジラ幻論」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    ゴジラ幻論 ――日産怪獣類の一般と個別の博物誌 作者: 倉谷滋出版社/メーカー: 工作舎発売日: 2017/02/18メディア: 単行この商品を含むブログ (4件) を見る 書は日の進化発生学(エヴォデヴォ)の第一人者である倉谷滋の手によるゴジラである.倉谷は昨年末から今年初頭にかけて「分節幻想:動物のボディプランの起源をめぐる科学思想史」(2016/11)という800ページを越える超巨大を執筆し,さらに2004年に刊行された「動物進化形態学」をほとんど全面的に書き直した,これも700ページを越える「新版 動物進化形態学」(2017/01)も出している.このものすごい執筆量にはただただ圧倒されるのだが,さらに書である.おそらくこの巨大を書いている合間に息抜きも兼ねて楽しみながら書いていたのだと思われるが,しかし実際に手に取ってみると小粒ながら濃密な書物になっている. 書を

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  •  「生物学の哲学入門」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    生物学の哲学入門 作者:良太, 森元,泉吏, 田中発売日: 2016/08/26メディア: 単行 書は森元良太,田中泉吏という2名の若手哲学者による「生物学の哲学」の入門書だ.進化理論とそのダーウィン以降の学説史を簡単に解説し,いくつかの哲学的なトピックを選んで,これまでに議論されてきたことをまとめている. 第1章 進化理論と進化学説史 ダーウィンのOrigin(種の起源)のテーマが何かというのは,いろいろな読み方があって,ソーバーがそれで一冊書いている.ここではダーウィンの論証の鍵は生命の樹仮説と自然淘汰説の2つだと平行的にまとめている.それぞれの解説は簡潔で要を得ている.ただし自然淘汰の条件として,変異の存在,変異が適応度にかかるものであること,変異が遺伝することの3つのみをあげていて,競争の存在をあげていないのは少し引っかかる*1. ここでダーウィンの論法が「最善の説明への推論(

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  •  「腐女子の心理学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    腐女子の心理学 彼女たちはなぜBL(男性同性愛)を好むのか? 作者: 山岡重行出版社/メーカー: 福村出版発売日: 2016/06/09メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見る 書は社会心理学,パーソナリティ心理学の視点から「腐女子」についてのリサーチを行った結果をまとめただ.元々マイノリティとそれに対する差別の心理(正確には「少数派の意識と,多数派の少数派に対する意識」)をリサーチしていた著者が,学生から「腐女子」をテーマに卒論を書きたいと相談されることが多くなり,基礎的な文献がないこともあって自ら行ったり指導してきたリサーチをにしたという経緯を持つ.だからこの分野の基礎的な文献になることを目指した専門書であり,構成的には多くのリサーチテーマについて,それぞれテーマの解説,調査方法,結果,考察という形で書かれており,かなり硬派なに仕上がっている. なお書では「腐

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  •  東京大学 こころの多様性と適応の統合的研究機構 キックオフシンポジウム - shorebird 進化心理学中心の書評など

    東京大学には,学部,研究科,研究所,全学センターなどの組織とは別に「総長室総括委員会」を設置する「機構等」という組織が20近くある.(例えば地球観測データ統融合連携研究機構,大学発教育支援コンソーシアム推進機構などの名前が並んでいる) 今般この機構等の1つとして「こころの多様性と適応の統合的研究機構」が新たに発足する.これは総合文化研究科、医学系研究科、人文社会系研究科、教育学研究科、法学政治学研究科の緊密な連携により,思春期,青年期に焦点をある程度当てて,系統発生,進化適応,社会党の相互作用などのいろいろな面からこころの発達を調べていこうという学際的な取り組みを行うもののようだ.英名は「UTokyo Institute for Diversity & Adaptation of Human Mind」略して「UTIDAHM」(ユーティダムと読むようだ) そして6月13日にそのキックオフシ

     東京大学 こころの多様性と適応の統合的研究機構 キックオフシンポジウム - shorebird 進化心理学中心の書評など
    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2015/06/21
    無知のヴェールに関する実験
  •  「進化とは何か」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    進化とは何か:ドーキンス博士の特別講義 作者: リチャードドーキンス,吉成真由美出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2014/12/19メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (8件) を見る 書はリチャード・ドーキンスが1991年に英国のロイヤルインスティテューションが主催する子供たち向けのクリスマスレクチャーで講演した内容(全5回)が元になったものだ.レクチャーの題は「Growing Up in the Universe」*1.この講演の様子はヴィデオ化されてDVDになり,さらにYouTubeでも公開されている.あちらでも書籍化されたようだが,現在では入手困難になっているところ,新たに編集邦訳され,インタビューを加えて日語で出されたということになる. 第1章では進化が成し遂げた驚くべき産物を次々に紹介し,そしてそれがヒトの想像を遙かに超えた時間の広がりの中で起こっ

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  • 「The Sense of Style」第6章収録の各論について その2  - shorebird 進化心理学中心の書評など

    The Sense of Style: The Thinking Person's Guide to Writing in the 21st Century (English Edition) 作者:Pinker, StevenPenguin BooksAmazon ピンカーの文法各論はつづく. likeの用法 「likeは接続詞ではなく前置詞なので,その後は名詞句しかとれない」と自称文法家はよく指摘する.彼等にいわせれば「Winston tastes good, like a cigarette should.」というコピーは誤りでasを使わなければならないということになる.これは騒ぎになり,雑誌The New Yorkerやウォルター・クロンカイトもこの尻馬に乗った.広告会社とタバコ会社は,この批判の嵐に対し大喜びで「何が欲しい?正しい文法,それともよい風味?」と打ち返して思いっきり煽

    「The Sense of Style」第6章収録の各論について その2  - shorebird 進化心理学中心の書評など
    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2014/11/22
    前置詞が節もとるっていうのは独特な説明のような。生成文法とかだとそうなのかな
  •  「The Sense of Style」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    The Sense of Style: The Thinking Person's Guide to Writing in the 21st Century (English Edition) 作者:Pinker, StevenPenguin BooksAmazon 書はスティーヴン・ピンカーによる「文章の書き方教」,いわゆるスタイルマニュアルだ.ここでピンカーが取り扱うのは,何かの事実・知識を読者に伝えようとするノンフィクションの書き方についてだ. 序言では,ピンカー自身スタイルマニュアルを読むのが好きだとコメントしている.それは,マニュアル自身がよい文章の見であるからだという理由もあるが,「よい文章スタイルとはどういうものか」という問題は,結局「自分の伝えたい考えと相手の心をつなぐにはどうするのがよいのか」という問題であり,言語心理学,認知科学的にも興味深いからだと説明されている

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  •  「異端の統計学ベイズ」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    異端の統計学 ベイズ 作者: シャロン・バーチュマグレイン,Sharon Bertsch McGrayne,冨永星出版社/メーカー: 草思社発売日: 2013/10/23メディア: 単行この商品を含むブログ (28件) を見る 書はベイズ統計学の学説史にかかるで,アメリカのサイエンスライターの手によるもの.原題は「The Theory That Would Not Die: How Beyes’ Rule Cracked the Enigma Code, Hunted Down Russian Submarines, and Emerged Triumphant from Two Centuries of Controversy」ということでまるでスパイ小説のようなタイトルだが,邦題はより論争史を意識したものになっている.私としてはソーバーの「科学と証拠」を読んでベイズ主義と頻度主義

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  •  「ヒトはなぜ協力するのか」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    ヒトはなぜ協力するのか 作者: マイケルトマセロ,Michael Tomasello,橋彌和秀出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2013/06/30メディア: 単行この商品を含むブログ (10件) を見る 書は発達心理学者マイケル・トマセロによるヒトの協力についてのである.これは元々スタンフォード大学で2008年10月に行われたタナー講義(Tanner Lectures on Human Value*1 )におけるトマセロの2回の講演「Origins of Human Cooperation」とそのディスカッションをまとめたもので,小振りだが,趣旨が明快なになっている. トマセロといえば,発達心理,比較心理の視点からリサーチを行い,言語獲得において,チョムスキーによる生得的な生成文法,言語構造を認めずに激しくがんばっていることで有名であり,文法を含む言語能力の生得性について全く

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  •  「科学を語るとはどういうことか」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    科学を語るとはどういうことか ---科学者、哲学者にモノ申す (河出ブックス) 作者: 須藤靖,伊勢田哲治出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/06/11メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (20件) を見る 書は物理学者須藤靖と科学哲学者伊勢田哲治による科学哲学を巡る対談集である.実際には対談時のやりとりをベースにして,双方が調整しつつ加筆修正を加えており,メリハリの利いたきびきびとした対談に仕上がっている.帯を含めた装丁も大胆で,思わず手に取りたくなるうまい作りだ. 対談にいたる経緯は須藤の「はじめに」と伊勢田の「終わりに」にそれぞれ書かれている.須藤は因果を巡る「あまりにも的外れ」な議論が科学哲学においてなされていることを知り,その後に知り得たことも含めた科学哲学についての批判的な講義を駒場において行う.その講義案を伊勢田がネットを経由して閲覧し,

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    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2013/06/23
    明晰/思考触発ってtogetterで見た説明だなと思ったらご本人だった: 「明晰さを追求する哲学・思考を触発する哲学」http://togetter.com/li/158196
  •  「なぜ猫は鏡を見ないか?」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    なぜは鏡を見ないか? 音楽と心の進化史 (NHKブックス) 作者: 伊東乾出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2013/01/26メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (13件) を見る 書名からは,動物の自己鏡映認知にかかるだと思ってしまいそうだが*1,これは音楽家である著者が音楽質を理解しようと認知科学の力を借りながら知的奮闘してきた探求物語だ.副題には「音楽と心の進化誌」とあるが,特に進化的に何かが深く考察されているわけではない*2. というわけで「自己鏡映認知」的な書名と「進化誌」という単語に釣られて購入し,読み始めた私にとっては内容的には肩すかしのはずだったのだが,しかしこれは読み出したら止まらない,大変面白いだ. まず著者の経歴が型破りだ.著者は中学2年でバルトークの「作曲技法」に入れ込み,FM放送で現代作曲家の松村禎三の「交響曲」を聴いて惹きつ

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  •  「言語が違えば,世界も違って見えるわけ」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    言語が違えば、世界も違って見えるわけ 作者:ガイ ドイッチャーインターシフトAmazon 書は言語学者ガイ・ドイッチャーによる「言語がヒトの思考に影響を与えているか」という問題,いわゆるサピア=ウォーフ仮説の弱いバージョンについてのである.原題は「Through the Language Glass: Why the World Looks Different in Other Languages」 この問題は,私の理解では,以下のような状況だ.最初「言語こそが思考を構成する」というサピア=ウォーフ仮説の強いバージョンが主張され,一部の哲学者や文化相対主義者たちが飛びついたのだが,数々の証拠から否定された.次に「言語は思考に影響を与えている」という弱いバージョンが主張されるようになった.そしてこれについて様々なリサーチが行われ,論争が繰り広げられ,少なくとも何らかの影響があることはほぼ

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  •  「シビリアンの戦争」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    シビリアンの戦争――デモクラシーが攻撃的になるとき 作者: 三浦瑠麗出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2012/10/19メディア: 単行購入: 13人 クリック: 615回この商品を含むブログ (17件) を見る 書はある種の戦争開始のメカニズムについてのである.著者の三浦瑠麗は東大農学部卒業後,同じく東大の法学政治学研究科の大学院に進み,2010年に法学博士となるというちょっと変わった経歴を持ち,現在は東大政策ビジョン研究センターの特任研究員という若手研究者だ.書はそれまでの研究成果を生かしたはじめての主著ということで気合いが入ったになっている. 問題意識としては,「これまで関東軍の独走を許した日や多くの軍事政権の暴走の例をふまえて,一般的に『軍部は基的に戦争をしたがり,それを抑えるためにシビリアンコントロールが重要だ』と考えられてきている.しかしイラク戦争を見るとこ

     「シビリアンの戦争」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
    ja_bra_af_cu
    ja_bra_af_cu 2013/01/29
    “基盤脆弱な政治家は世論が開戦に傾くと抵抗できない.〔……〕シビリアンコントロールが機能的に構築されていれば,軍人は(シビリアンに逆らっても放逐されるだけなので)最終的には政治家の判断に従う”