話速変換や音域拡張,バーチャル・サラウンド,自動音場補正など(前編) ―― DSPによる音声信号処理の動向と実現法 米本 明弘,桜井 淳宏,岩田 佳英,伊藤 裕二 音声に関して,ディジタル信号処理技術を利用した製品が多数存在します.例えば,小型スピーカを搭載しているだけなのに迫力のある音を再生できる薄型テレビや,音声の自然さを損なわずに録音時と異なった速度で再生できるICレコーダなどです.ここでは,ディジタル信号処理を実現するデバイスの一つであるDSP(Digital Signal Processor)を利用した音声信号処理技術について前編と後編にわけて解説します. (編集部) 1. 音声信号処理の変遷● 1877年に録音・再生機が登場 音を録音し,好きなときに取り出して聞くという夢を実用化したのが,発明王の異名を持つ米国人トーマス・エジソン (Thomas Edison)でした.彼は18