ロシア芸術を愛する若き大統領――。日本演劇界の「最後の巨匠」と呼ばれる演出家の鈴木忠志さん(84)が22年前、プーチン大統領との面会で抱いた印象だ。そのプーチン氏がウクライナ侵攻を続け、ロシア芸術が表舞台から排除されつつある。「この状況を作り出したのは彼自身」と失意をあらわにする鈴木さんが、2度の面会で見たプーチン氏の姿とは。 鈴木さんは早稲田大在学中に演劇活動を始め、劇作家の別役実らと劇団「早稲田小劇場」を結成、唐十郎、寺山修司らと1960年代から演劇界を牽引(けんいん)してきた。自身の名を冠した俳優の訓練法「スズキ・トレーニング・メソッド」は名門「ジュリアード音楽院」(米国)など世界中で採用されてきた。 プーチン氏との最初の面会は2001年4月。「シアター・オリンピックス」のモスクワ開催のためだった。旧ユーゴスラビアの民族間紛争をきっかけに、演劇を通じて反戦や反差別の強い意思を示そうと