写真1●京都府立医科大学の花園学舎生体情報分子科学の花井一光教授(左),集中治療部部長の橋本悟病院教授(中央),大学院医学研究科放射線診断治療学講座の伊藤博敏氏(右) 京都府立医科大学は2008年3月,学生や教職員など約3600人が使用するメール・システムを刷新。自前で運用していたシステムを,SaaS(software as a service)を使って置き換えた。 同大学には情報システム部がなく,「兼任者が運用していた」(伊藤博敏・大学院医学研究科放射線診断治療学講座,写真1右)。そのため担当者の負担が重く,それに加えてメール・システム自体の負荷が高くなってきたことが刷新の理由である。 メール運用を“サービス”に任せる 刷新前は,自前で3台のメール・サーバーを運用していた。これを同大学では,すべて米グーグルのSaaSである「Google Apps Education Edition」で賄
SaaSやECなどを手がけるサービス事業者は,独自に巨大なデータ・センターを運営していることが多い。米アマゾン,米グーグル,米セールスフォース・ドットコムなどだ。これらの企業が自ら構築して利用する基盤(プラットフォーム)を,他のユーザーにサービスとして提供する「PaaS」(platform as a service)と呼ぶサービスが登場している(図1)。 図1●多数のユーザーが利用するSaaSのプラットフォームをサービスとして提供する「PaaS」 セールスフォース・ドットコムやグーグル,アマゾンなどがPaaS型のサービスを提供している。 ユーザーにとっては,(1)既に実績あるプラットフォームを活用して自らがSaaS事業者としてサービスを展開できる,(2)自前でSaaSを提供するためのミドルウエアやハードウエアを用意しなくても済む,という利点がある。 PaaSの代表例は,セールスフォース・ド
筆者は現在,71日間に及ぶ米国取材の成果を「クラウド・コンピューティング特集」としてITproに掲載すべく,悪戦苦闘している。本来であればこの「記者の眼」は,その特集記事の紹介に当てるつもりだった。ところが無情にも特集が完成する前に締め切りが来た。そこで今回は,記者が米国で何を見て,これから何を書こうとしているのか,実録風に紹介させて頂きたい。 2008年3月:出張準備 筆者は今回,4月6日から6月15日まで,米国サンフランシスコを中心に,米国IT事情に関する現地取材を敢行した。長期出張のきっかけとなったのは,2008年1月末に起きた,米Microsoftによる米Yahoo!への買収提案だった。 「MicrosoftがYahoo!を買収しようとしている」という噂は前々からあったが,なぜMicrosoftがこれほど必死になっているのか,われわれはその真意を掴みかねていた。その理由を肌で感じる
今やセールスフォース・ドット・コムは、グーグルが買収を目論む次の企業との印象が消し切れなくなっている。 「もし、グーグルがエンタープライズ市場で本気でマイクロソフトと闘うつもりなら、セールスフォースを買収する以外にその方法はない」。今年5月、そう明言したのは調査会社451グループである。 そのちょうど1ヵ月前の4月半ば、セールスフォースCEO(最高経営責任者)のマーク・ベニオフとグーグルCEOのエリック・シュミットは、サンフランシスコのホテルで仲良く壇上に並び、セールスフォースのCRM(顧客管理)アプリケーションにGメールやチャット、カレンダーなどの機能を持つグーグル・アップスを統合することを発表したばかりだった。 CRMとは、顧客のデータ管理やマーケティングの自動化、人材の最適化、コミュニティ管理などを総合的に行うアプリケーションで、現在は大小の多くの企業が導入している。 実はグ
米Efficient Frontierは米国時間2008年7月17日,米国の検索連動型広告市場に関する調査結果を発表した。それによると,2008年第2四半期におけるGoogleの売上高シェアは前年同期から2ポイント増加して77.4%に達した。Yahoo!は同2ポイント減の17.8%,Microsoft Live Searchは横ばいの4.8%だった。 CPC(クリック単価)では,Googleが前年同期比で13.8%増加したのに対し,Microsoft Live Searchは同5.6%増にとどまり,Yahoo!は同7.3%の減少だった。ROI(投資回収率)は,Googleが前年同期比3%増,Microsoft Live Searchが同25%増,Yahoo!が同13%増と,3つの検索エンジンすべてで増加した。 Googleは米国のほか,英国,フランス,ドイツ,イタリア,スペイン,ブラジル,
米国時間7月8日、「Google Docs」の多数のユーザーが1時間にわたってオンラインワードプロセッサやプレゼンテーションを利用できなくなった。今回の障害により、クラウドコンピューティングに伴う問題のみならず、この構想が受け入れられるための努力が徐々に進展していることも明らかになった。 ソフトウェアをPCや企業のサーバではなく、インターネットのコンピュータで動作させるクラウドコンピューティングには、技術的にも文化的にもある種の信頼が必要だ。クラウドコンピューティングのユーザーは常に他人のコンピュータインフラを信頼しなければならず、危険だともいえる。 しかし、保証や実用的なツールが次第に登場してきており、移行の負担が和らげられることもあり得る。 たとえば、Googleは、Google Appsサービスのオンライン電子メールコンポーネントである「Gmail」がほぼ常時利用可能で、99.9%の
今や検索サービスのみならず、クラウドコンピューティングの基盤(プラットフォーム)の提供者となりつつある米グーグル。同社がクラウドに邁進する理由は何なのか。ネットの世界をどう変えていこうとしているのか。クラウド戦略の担い手として米ビジネス・ウイーク誌の表紙を飾った経験もあるカリスマエンジニアのクリストフ・ブシーリヤ氏に聞いた。(聞き手は中村建助=日経ソリューションビジネス編集長、玉置亮太=日経コンピュータ) グーグルの考えるクラウドコンピューティングの意義は何か。 利用者にとってクラウドコンピューティングの利点は大きく二つある。一つは様々な選択の自由を与えることだ。WindowsマシンはもとよりMacbook Air、iPhone、BlackBerryなど、利用者のデバイスを問わない。OSも何でも良い。クライアントに必要なのは基本的にWebブラウザだけだ。同じアプリケーションに様々なデバイス
「Web3.0はクラウド・コンピューティング、プラットフォームの時代」と唱えるセールスフォース・ドットコム(関連記事)。同社が提供する「Force.com」は、ビジネス・アプリケーションの開発者に何をもたらすのか。7月3日の開発者向けイベントに合わせて来日した米セールスフォース・ドットコムのプラットフォーム&デベロッパーマーケティング担当副取締役 アダム・グロス氏に話を聞いた。 クラウドは業界全体の動き、 Force.comはエンタープライズにフォーカスする ――セールスフォース・ドットコムは、Force.comによって開発者にどのようなメリットを与えようとしているのか。単刀直入にお聞きしたい。 グロス氏 従来型のソフトウェアの開発モデルに較べて、はるかに簡単に、確実に成功を約束できるということだ。 ビジネス・アプリケーションを開発するためには、さまざまなリソースが必要だ。だがこれまで、必
「ゲイツ後」の世界では、OSの地位は相対的に下がる。アプリケーションとハードの中心だったOS、すなわちWindowsに代わり、新たなIT基盤が登場するからだ。ネットサービス、仮想化…。「次のWindows」を巡る主導権争いはすでに始まっている。 米マイクロソフトが3年ぶりに開催する秋の開発者会議「PDC」。5月28日に発表されたプログラム概要がちょっとした話題を呼んでいる。 PDCは次期Windowsの新機能をお披露目するのが恒例。だが、今回に限っては「クラウド(Cloud)」という言葉が幅を利かせる。 2010年にも出荷予定の「Windows 7(開発コード名)」はすっかり脇役扱い。「マイクロソフトはWindowsからクラウドに舵を切ったのか」。米国ではそんな憶測も出ている。 「Windows」。コンピュータの歴史で最も多くの人に利用されたソフトウエアだろう。パソコンを一部のマニアのおも
今から65年も前のコンピュータ黎明期の頃、IBM創業者のトーマス・J・ワトソンがこう述べた。「コンピュータは全世界の市場でせいぜい5台ぐらいしか売れないだろう」。データセンターにあふれんばかりのサーバー群を見る現在、「何をバカな」と、この発言を一笑に付すのはたやすいことである。 しかし2006年になって、「ワトソン発言は最後に正しかった、と皆が理解するかもしれない」と、ブログに書く人物が出てきた。米サン・マイクロシステムズのCTO(最高技術責任者)であるグレッグ・パパドポラス氏だ。同CTOは、急速なクラウドコンピューティングの展開を受けてワトソン発言を引用し、「世界は5台のコンピュータだけしか必要としていない」と、業界を煽ったのである。 5台というのは「五つの巨大なクラウドコンピューティング網」のこと。グーグルやアマゾン・ドットコム、セールスフォース・ドットコム、マイクロソフトの「live
グーグルにセールスフォース・ドットコム買収を提案した451グループのレポートがインターネット上で公開されてから、わずか数時間で吾輩のメールボックスは満杯になった。多くの読者や事情通が、それに関する賛否を書き送ってきたのだ。 ある読者は、何人かの業界アナリストのコメントを引用して、こう指摘した。「グーグルはエンタープライズ市場で売り上げを伸ばしていない。グーグルは優れたコンシューマ企業ではあるが、エンタープライズ市場は未開拓だ。このままの状態が続けば、マイクロソフトのように、いずれ広告とERPの狭い隙間で身動きが取れなくなるだろう」 一方、それほど楽観的ではない意見も少なくなかった。サイモン・ガントレーは、「グーグル・セールスフォース連合など、タイム・ワーナーがAOLを買収したとき以来の最悪のアイデアだ」と切り捨てる。なかなか手厳しいな。「セールスフォースはグーグルのビジネスパートナーとして
『MarkeZine』が主催するマーケティング・イベント『MarkeZine Day』『MarkeZine Academy』『MarkeZine プレミアムセミナー』の 最新情報をはじめ、様々なイベント情報をまとめてご紹介します。 MarkeZine Day
米Salesforce.comは米国時間2008年6月23日,同社のSaaSアプリケーション・プラットフォームから米Googleの各種サービスを利用するためのツールキット「Force.com Toolkit for Google Data APIs」を発表した。既に両社がWebサイト(Salesforce.com,Google)で無償提供を始めている。 Salesforce.comのSaaSアプリケーション・プラットフォーム「Force.com」に,Googleのサービス用API群「Google Data APIs(GData)」へのアクセス機能を付加する(関連記事:【Dreamforce 2007】SaaS版の“標準OS”を目指す、米セールスフォースが「Force.com」を発表)。これにより,オンライン・アプリケーション・サービス「Google Apps」のデータ/コンテンツを利用する
salesforce.comは、開発者がGoogleのサービスを活用できる新しいツールキットで、Googleとの提携をさらに進める。 salesforce.comとGoogleの両社が、salesforce.comの顧客関係管理(CRM)アプリケーションを、統合された「Google Apps」につなげる最初の契約に署名をしたのは、2008年4月のことだった。 salesforce.comは米国時間6月23日、「Force.com Toolkit for Google Data APIs」をローンチしたと語った。これでForce.comの開発プラットフォームを使う開発者が、Google Appsのデータに接続できるようになるという。 Force.comはホスティング型ウェブアプリの構築に向けた、salesforce.comのクラウドコンピューティングサービスだ。 両社は今回のツールキットで、
富士ソフトは2008年6月11日、グーグルの企業向けサービス「Google Apps Premier Edition」を国内で販売していくと発表した。Google Appsは電子メールやスケジュール管理、文書作成・共有ツール、企業内ポータルなどを企業向けにネットワーク経由で提供するサービスである。 Google Apps Premier Editionはグーグルが2006年から企業向けに無償で提供していた「Google Apps Standard Edition」の有償版。1人当たり年間6000円の利用料金を必要とする。その代わり、グーグル側で99.9%の稼働率を保証する、24時間の電話サポートが利用できる、シングル・サインオンをはじめとした各種のAPIが使用可能といった形で、より本格的なビジネス利用を意識した仕様になっている(Google Apps Premier Editionの関連記
へぇー、あのベタな受託ソフト開発会社がグーグルとSaaSで協業? えっ、記者会見に登場した富士ソフト副社長って、日本IBMでパソコン事業を担当していた堀田さんじゃないですか! 「富士ソフトがGoogle Appsの企業向け販売を開始」には、ちょっとした驚きがあった。「富士ソフト」「グーグル」「堀田」の三者がうまく頭の中で結びつかない。数年前なら到底あり得ない組み合わせだからだ。 とは書いたものの、SIerや受託ソフト開発会社といったITサービス会社がSaaS事業に参入するのが、最近の流行ではある。直近では日本ユニシスもSaaS事業に本格参入することを表明している。ITサービス会社は以前、いわゆるASPブームの際、安直にブームに乗っかり痛い目に遭った。その後遺症からか、今度は100%間違いないブームが来ているのに、SaaS事業に消極的だった。「こりゃ、ヤバイなあ」と思っていたから、とりあえず
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く