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ブックマーク / www.newsweekjapan.jp/column (51)

  • 財政赤字の「ネズミ講」はいつまで続けられるか

    安倍首相は18日夜に記者会見し、消費税の増税を先送りして衆議院を解散することを表明した。彼は財政健全化目標については「来年夏までに達成に向けた具体的案計画を策定いたします」というだけで目標を示さなかったが、彼のブレーンである浜田宏一氏(内閣官房参与)は、ロイターのインタビューに次のように答えている。 [政府債務は]実現可能なネズミ講システムだ。普通のネズミ講はどこかで終わって破綻するが、どこの政府でも次の納税者は必ずあらわれる。政府が自転車操業でお金を借りまくることはいいことではないが、政府と民間を合わせれば、消費税を先送りしても信頼が崩れることはない。 「ネズミ講」は原文ではPonzi schemeとなっており、バーナード・マドフなどの行なった出資金詐欺をさす。これは出資者に高い運用利回りを約束するが、実際には運用益は上がっておらず、新しい出資者の資金を利益として分配し、その元いつ

  • L型産業で「江戸時代化」する日本

    冨山和彦氏(経営共創基盤CEO)が、文部科学省の有識者会議で示した「我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性」という資料が、大きな反響を呼んでいる。これが衝撃を与えたのは、大学をG型(グローバル)とL型(ローカル)にわけ、大部分をL型大学に分類したからだろう。 G型は世界の一流大学と競争する(特に理科系の)大学であり、グローバルに競争できる高度な人材が必要だ。しかしハーバード大学やオクスフォード大学などは、ごく一部のエリートに高度な専門知識を教える教育機関であり、その卒業生は労働人口の1%にも満たない。 日の大学の卒業生の大部分は、ローカルなサービス業に就職するので、高度な専門知識も一般教養も必要ない。L型大学はシェイクスピアや経営戦略論を教えるのではなく、簿記や会計を教える職業訓練校になるべきだ――というのが冨山氏の主張である。 これは質的には、

  • STAP細胞事件と朝日新聞誤報事件に学ぶ「だめな危機管理」

    理化学研究所のSTAP細胞についての検証実験の中間報告が行なわれた。これまでの22回の実験では、STAP細胞はできなかったという。では小保方晴子氏が記者会見で「200回できた」と言っていたのは、何だったのだろうか。これについて検証実験を行なった丹羽仁史氏は「自家蛍光だったのではないか」と推定している。 体細胞に酸性の液などの強い刺激を与えると、細胞が死ぬ前に一時的な変化が起こり、光を当てたとき発光する場合がある。これは多能性細胞のできたときと似ているので、小保方氏がSTAP細胞と誤認した可能性があるというのだ。この推定は未確認だが、もしそうだとすると、こんな初歩的な誤認がなぜ今まで発見できなかったのかが問題になる。 同じような問題は、いま集中砲火を浴びている朝日新聞の慰安婦問題をめぐる誤報事件と似ている。この場合も慰安婦を「女子挺身隊」という軍需工場に勤労動員する制度と取り違える初歩的なミ

  • 日本の大学は学位を売る「ディプロマ・ミル」になるのか

    理研の小保方晴子氏の博士論文をめぐって、早稲田大学の調査委員会は博士号の取り消しには該当しないという調査報告書を発表した。これについて多くの大学関係者が批判しているが、これは早大だけの問題ではない。 調査委員会は、最大の疑惑だったNIH(米国立衛生研究所)のウェブサイトの文書をコピーした事実について「著作権侵害行為であり、かつ創作者誤認惹起行為といえる」と認定し、「仮に博士論文の審査体制等に重大な欠陥、不備がなければ、件博士論文が博士論文として合格し、小保方氏に対して博士学位が授与されることは到底考えられなかった」と断定した。 にもかかわらず、この論文は「誤って公聴会時前の段階の博士論文草稿を製し、大学へ提出した」ものだという小保方氏の言い訳を認め、「行為者の過失によって不正行為が生じた場合には、学位を取り消すことができない」という理由で、学位規則に定める「不正の方法」には該当しないと

  • なぜ中国はいま韓国に急接近し始めたのか

    中国の習近平国家主席が、7月3日から韓国を訪問した。中国の国家主席が北朝鮮より先に韓国を訪問したのはこれが初めてで、中韓の接近が話題になった。しかし韓国の朴槿恵大統領との共同声明では、日との「歴史問題」は言及されず、意外に抑制された内容になった。 中国は安重根(伊藤博文を暗殺したテロリスト)の記念館をハルビン駅につくり、来年の「抗日戦争勝利70周年」の記念行事に参加するよう韓国に求めている(当時の朝鮮は中国を侵略した日の領土だったが)。韓国ではこういう「反日同盟」に同調する動きと、中国を警戒して米韓関係に配慮する動きがあるようだ。 たとえば韓国の代表的な全国紙である中央日報は「日に高強度警告メッセージ送った韓中首脳」と題して韓国政府の日の集団的自衛権に対する批判を伝える一方で、「米国は韓国中国側に急速に傾くのではという疑いを抱く可能性がある」という懸念も表明している。この妥協の結

  • 少子化の原因は「性差別」ではなく厚労省にある

    安倍政権の打ち出した「成長戦略」には見るべきものがほとんどないが、意外に海外に受けがいいのが「ウーマノミクス」と呼ばれる女性の活用策だ。安倍首相を「右翼」ときらうアメリカ友人も、これだけは評価する。彼らが「日もついに女性の権利にめざめた」と評価するのが、先週の東京都議会のヤジ事件だ。 「東京都の第一子出産年齢が32歳と高い」と質問した塩村文夏都議に対して「早く結婚したほうがいいんじゃないか」などのヤジが飛んだ。これにネット上で批判が集中し、ヤジを飛ばした議員が謝罪した。それだけの話だが、CNNなど多くの海外メディアが速報し、塩村議員は外国特派員協会にまねかれて講演した。CNNはこう報じている。 日の職場では、性差別が当たり前だ。日の女性が結婚・出産よりも仕事を続けることを選ぶために出生率が低下していると懸念されている。安倍首相はこの職場のギャップを「ウーマノミクス」で埋めようとして

  • 福島第一原発の凍土壁は安倍首相の面子を守る「万里の長城」

    福島第一原発で「凍土壁」の工事が始まった。これは事故を起こした原子炉からもれる水が地下水を汚染するのを防ぐため、地下30メートルまで凍結管を打ち込み、土を凍らせて地下水をブロックする工法だ。全長1.5キロメートルで、約320億円の国費を投入する。 私は先月、福島第一原発を見学して、この凍土壁を建設する現場も見たが、率直にいって何のためにつくるのか、理解できなかった。地下水を止めても、雨が降るかぎり地下水の汚染は止まらない。こんな高度な技術に投入する予算があったら、施設に蓋をしたほうが早い。 しかしそれは国費ではできない。昨年、安倍首相がオリンピック招致のとき「国が前面に出る」と宣言して470億円の「予備費」を支出することを決めたが、これは国が私企業に出す金なので、普通の土木事業には使えない。凍土壁は、世界にない技術の「研究開発」として、財務省が国費の支出を例外的に認めたからだ。 だから凍土

    福島第一原発の凍土壁は安倍首相の面子を守る「万里の長城」
  • 人口減少時代には「メガシティ」への人口集中が必要だ

    の人口はすでに減り始めており、あと30年で3000万人以上減って1億人を割る見通しだ。これに対して「少子化対策」や移民の受け入れなどの話が出ているが、当に人口減少は困ったことなのだろうか。 個人の豊かさの基準はGDP(国内総生産)ではなく、一人あたりの所得である。日経済はこれからゼロ成長に近づくが、一人あたりGDPは今後も毎年1%ぐらい増えると見込まれるので、労働生産性を上げれば生活水準は維持できる。 しかし人口が減ると、いろいろな格差が拡大する。特に重要なのは、社会保障のゆがみによる世代間格差である。生産年齢人口は毎年1%近く減るので、高齢者の比率が増え、彼らの年金を支える現役世代の負担が重くなる。 鈴木亘氏(学習院大学)の推計によれば、今の社会保障制度のままだと2025年に国民負担率(税+社会保険料)は50%を超え、2050年には70%に達する。国民所得(純所得)が年率1%で成

    人口減少時代には「メガシティ」への人口集中が必要だ
  • STAP細胞事件から見えてきた現代の科学研究の死角

    理化学研究所の小保方晴子氏などのチームが発見したとされる「STAP細胞」について、多くの疑惑が出ている。"Nature"に発表された論文の共著者である山梨大学の若山照彦教授が論文の撤回を呼びかけ、理研は撤回を検討し始めた。まだ人から説明がないので事実関係が確認できないが、論文に重大な欠陥があることは明らかだ。 STAP細胞は、体細胞に弱酸性の液などの「刺激」を与えるだけで初期化され、幹細胞(すべての体細胞に分化できる細胞)になるという驚くべき発見である。幹細胞は受精卵の中にある初期の細胞で、それが分化していろいろな体細胞になるが、特定の部位に分化した体細胞は他の体細胞にはならない。 体細胞から幹細胞をつくって同じ個体を複製するクローンの技術は、1990年代から進んできた。今まで受精卵の胚細胞から幹細胞をつくるES細胞や遺伝子組み換えで幹細胞をつくるiPS細胞はあるが、普通の体細胞を刺激す

  • 「ビットコイン」の盗難事件で仮想通貨は終わるか

    インターネット上の仮想通貨「ビットコイン」の最大手の取引所、「マウント・ゴックス」がサービスを停止した。いまだに公式の説明はないが、東京に社を置く同社のホームページには、日時間の26日早朝に次のようなメッセージが掲載された。 最近の報道とマウント・ゴックスの営業と市場に対する影響を考慮して、サイトと利用者を保護するために当分すべての取引を停止する決定が行なわれた。状況を仔細に監視して対応する。 ネット上には"Crisis Strategy Draft"と題した出所不明の文書が流れているが、同社はその内容を否定していないので内部文書と思われる。それによれば、システムの欠陥を悪用した犯罪で74万4408BTCが盗まれたという。BTCはビットコインの通貨単位で(稿を書いている段階で)1BTC=約5万7000円なので、これで換算すると約424億円。マウント・ゴックスはビットコインの7割を取引

  • 「ケネディ姫」のわがままが日米関係を混乱させる

    共同通信によると、NHKがキャロライン・ケネディ駐日アメリカ大使へのインタビューを申し込んでいったん了承されたが、2月になって大使館が百田尚樹氏(NHK経営委員)の発言を理由に断ったという。これは「大使とワシントンの意向」とのことだが、大使が経営陣の発言を理由にNHKの取材を拒否したのが事実だとすれば前代未聞である。 大使が問題にしたのは、百田氏が東京都知事選挙の応援演説で東京大空襲や原爆投下を「大虐殺」と呼び、「東京裁判はそれをごまかすための裁判だった」という発言らしい。これは歴史認識として間違っているが、彼の個人的意見であってNHKの見解ではない。こんな理由で政府機関が取材を拒否したら、報道は成り立たない。 ケネディ大使の暴走は、今に始まったことではない。彼女は1月にも、ツイッターで「米国政府はイルカの追い込み漁に反対します。イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念していま

  • 民主党が政権に残した「バカの壁」原子力規制委員会

    東京都知事選挙で細川元首相などが「原発再稼動の阻止」を訴えているのに対して、安倍政権は「原子力規制委員会が安全と認めた原発は再稼動する」という方針だ。しかし当コラムでも書いたように、再稼動の審査なるものは存在しない。規制委員会がやっているのは、2013年にできた新しい規制基準についての安全審査で、運転とは別である。運転しながら安全審査をすればいいのだ。 ところが規制委員会の田中俊一委員長は「原子力発電所の新規制施行に向けた基的な方針(私案) 」で、「新規制の施行段階で、設計基準事故対策及びシビアアクシデント対策(大規模自然災害やテロに起因するものを含む)として必要な機能をすべて備えていることを求める」とし、「規制の基準を満たしていない原子力発電所は、運転の再開の前提条件を満たさないものと判断する」と書いている。 新規制(安全基準)が施行されたのは2013年7月だが、この段階で「必要な機能

  • 「地域主権」が国家を破壊する

    民主党は2009年の総選挙のマニフェストで「地域主権」を掲げたが、これは名辞矛盾である。主権とは「他の意思に支配されない国家統治の権力」(『広辞苑』)で、来は絶対君主の権力を示す。具体的には、軍事力や警察力や通貨発行権である。「主権在民」などというが、国民には選挙権・被選挙権しかない。まして地方自治体に主権があるはずがない。 ところが最近、自治体が国家を超える「主権」を主張するケースが目立つ。沖縄県の名護市長選挙では19日、「辺野古の海にも陸にも基地をつくらせない」と公約していた稲嶺市長が再選されたが、辺野古への米軍基地移転ついては日米両国と沖縄県が合意したので、名護市がそれを阻止することはできない。沖縄防衛局は21日、基地移転のための埋め立て工事の入札を開始した。 他方、新潟県の泉田知事は東京電力の広瀬社長と会談し、東電の再建計画について「モラルハザードだ」などと批判して、柏崎刈羽原発

  • NHKは受信料をやめて「視聴料」にすればスマートTVになれる

    12月3日の毎日新聞は1面で、NHKが「テレビがなくても全世帯から受信料を徴収する義務化」を検討していると報じた。松会長が記者会見で否定したように、これは誤報だ。テレビ(受信機)を設置していない世帯から受信料を徴収するのは放送法違反である。 しかしこういう誤解が生じるのもやむをえない。NHKの受信料は、受信契約の義務はあるが、支払い義務がないというわかりにくい制度になっているからだ。受信料を払わない人に対する罰則もないため、今は不払いの人々には個別に民事訴訟を起こしている。 これは面倒なので、BBC(イギリス放送協会)のように支払いを義務化して罰則を設けるべきだという意見は今まで制度改革のたびに自民党から何度も出たが、NHKの執行部が踏み切れなかった。これにはNHKのお家の事情がからんでいる。 日放送協会は、戦前は国営で「大営発表」をラジオ放送して戦意昂揚に大きな役割を果たしたため、

    junradi
    junradi 2013/12/10
  • 金子勇氏とWinnyとともに日本が失ったもの

    7月6日、ファイル共有ソフトWinnyの作者、金子勇氏が急性心筋梗塞で死去した。享年42歳。あまりにも早い死だった。警察が彼を逮捕し、Winnyを葬り去ったことによって日が失ったものは限りなく大きく、もう取り戻すことはできない。 Winnyは、2002年に開発されたP2Pソフトウェアである。P2Pというのは、インターネットでサーバを介さずにパソコン同士で直接ファイルをコピーするシステムで、1999年にアメリカで開発されたナップスターが最初である。これは著作権法違反として禁止されたが、その後も世界各国でP2Pソフトが開発された。 Winnyもその一つだが、著作権法違反に問われるおそれがあるため、金子氏(当時は東大助手)は2ちゃんねるに「47」という匿名でプログラムを投稿した。これは大量のデータをコピーするために多くの中継点に部分的なキャッシュ(一時コピー)を残し、次にコピーするときはそのキ

    金子勇氏とWinnyとともに日本が失ったもの
  • 特定秘密保護法は「治安維持法」ではなく「スパイ防止法」である

    防衛・外交などの「特定秘密」を指定する特定秘密保護法案は衆議院を通過したが、参議院では自民党の石破幹事長の失言を野党が追及し、12月6日に会期末を控えてぎりぎりの駆け引きが続いている。朝日新聞を先頭に、メディアは「特定秘密保護法反対」の大合唱だが、そのほとんどは誤解である。 一番よくある誤解は「戦前の治安維持法のように言論統制を行なう法律だ」というものだ。治安維持法はすべての国民を対象にする法律だったが、特定秘密保護法は「我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定める」(第1条)ものであり、その対象は一般国民ではない。 規制対象になる「特定秘密の取扱者」は主として国家公務員だが、政治家も含まれる。政治家の情報管理はいい加減で、2001年の同時多発テロのときは田中真紀子外相が国防総省の避難先を記者会見でしゃ

  • 村木厚生労働次官に期待したい雇用規制の転換

    7月2日付で、厚生労働省の事務次官に村木厚子氏が就任した。文書偽造事件で逮捕されて話題になったが、安倍内閣の「女性活用」路線のシンボルとして選ばれたらしい。 しかし女性の雇用をめぐる環境はきびしい。日の女性の労働力率は60%前後で、OECD平均の70%に比べて低いが、特に問題なのは、20歳代後半から30歳代にかけて労働力率が落ちて40代で上がる、いわゆるM字カーブを描いていることだ。次の図のように、結婚・出産・育児等のために労働市場からいったん退出し、育児が落ち着いたあと労働市場に復帰するときにはパートタイマーの仕事しかないため、賃金が低い。 (図)女性の労働力率の「M字型カーブ」(出所:労働政策研究・研修機構) このため、非正社員の半分以上は主婦のパートである。私の友人でも、東大を卒業して電機メーカーで総合職として働いていたのが、夫の転勤でやめると、次の職はスーパーのレジしかない。

  • NOTTVが大赤字でもドコモは困らない

    6月24日にNOTTVという携帯端末用放送の「100万台突破」の記念放送が行われた。この放送が行われているのは、2011年に全国民が使っていた電波を強制的に止めた「跡地」である。1億台以上のテレビを粗大ゴミにしたのだから、よほど重要な新しい使い道があったのだろう――と思いきや、いまだにその電波のほとんどは使われていないのだ。 上の図の90~108MHzはNHKが、170~222MHzは民放が使っていたのだが、2011年7月24日をもって電波が止まった。ところがその「跡地利用」をめぐって総務省の方針が決まらず、205~222MHzまでの周波数帯が「マルチメディア放送」として携帯端末向けの放送に割り当てられた。ここには当初、60社以上の申請があったが、最終的には総務省の「一化工作」で民放連とNTTドコモの方式が採用される方向になった。 ところがアメリカのクアルコム社が最後まで一化に抵抗し、

  • 日本が「シェール革命」の恩恵を受けるにはパイプラインが必要だ

    アメリカ経済は「シェール革命」にわいている。深い地底にある頁岩(シェール)から天然ガスや原油を採掘する技術が実用化したことで、その埋蔵量は飛躍的に増えた。特にアメリカの天然ガス生産量はロシアを抜いて世界最大となり、IEA(国際エネルギー機関)の予測では、あと5年でサウジアラビアを抜いて世界最大の原油生産国となる。 シェールガス・オイルの強みは、化石の固まりである頁岩から採掘するため、在来型の化石燃料よりはるかに量が多いということだ。IEAなどの推定によれば、その埋蔵量は在来型の化石燃料の5倍以上で、今後200年以上あるという。オバマ米大統領は今年の一般教書演説で「アメリカは今後100年分の天然ガスを国内で自給できる」と宣言した。 このようなエネルギー価格の低下で、久しく「製造業の衰退」がいわれていたアメリカに、製造業が回帰する動きが始まっている。シェールガスの産地ではパイプラインや貯蔵施

  • アベノミクスの「偽薬効果」に副作用はないのか

    調子で急上昇を続けていた株価が、4月に入って下落に転じている。2日の日経平均株価の終値は、131円の続落で1万2003円。一時は300円以上も下がり、2011年の震災直後に匹敵する大荒れの相場になった。これは日で見ていると驚きだが、世界的にみるとそれほど不思議でもない。 日経平均とドル/円、ユーロ/円レート(4月2日15時現在)出所:Yahoo!ファイナンス 上の図のように、昨年10月からユーロ(青)が上がり、それにつられてドル(緑)が上がり始めたあと、自民党の安倍総裁が「日銀がお金を配れば景気がよくなる」などと言い始めたため、12月から急に株価が上がり始めた。今年2月までの日経平均の動きは、ユーロ/円レートにほぼ連動している。 当初の株価の動きは、合理的に説明できる。この時期の日株買いの主役は外国人の機関投資家で、日株がドル建てでみると割安になったため、それまであまり投資信託