カリスマ的トップダウンを弱めた「動機」 歴史を振り返ると、「ほぼ日」は1998年の開設当初は糸井氏の個人的なプロジェクトとして始まった。それが2007年頃を境に、より企業として存続させていくことを見据えた制度整備や組織化がなされてきた。仮に2007年を出発点に、そして株式上場がされた2017年3月16日を一つの区切りとして捉えるならば、本稿の参与観察期間である2015年から2016年の約1年間は上場に至る仕上げの最中にあたる。 「ほぼ日」で組織の制度的な役割を果たす「動機」や「雑談」といった概念や習慣、内蔵型の組織図や人事制度その他も、その間、徐々につくり上げられてきたものだ。2004年にアルバイトとして入社後、正社員になり、2008年頃にはじめて組織内の人事職についたCさんは、その過程の一つを次のように説明した。 「はじめの頃は、糸井さんの『動機』をみんなで実現する、という形だったんです