3月の原発事故から8月の原爆投下前後の時期を経て、「原発と原爆」をめぐるテーマがずいぶんとさかんに論じられた。 バルセロナでの村上春樹のスピーチで、日本人はそもそもすべての核を捨てるべきだったと主張されたあと、この主張はぼくの周辺の左翼に実にスンナリと受け入れられた。それまで核兵器と原発についての「区別」を論じていた身としては戸惑ってしまった。 同時に「朝日新聞」的なものの周辺では、「こんにちの原発の悲劇をのりこえられなかったのは、核兵器の惨禍を味わったにもかかわらず、その対抗思想が『核の平和利用』であり、これを克服できなかったせいだ」という議論がおこなわれた。 本書はタイトルとサブタイトルにもあるように、「核」をめぐる戦後日本の精神史である。冒頭に、日本がアメリカに輸出した「文化」として『ゴジラ』『アトム』『AKIRA』をあげ、 アメリカにとって、いや日本を除く全世界にとって、日本という