ハーバーマス、アレント、アガンベンあたりを中心にした、人文系啓蒙の書。 まず第一には、とにかく色々なものが紹介されている、入門書として読むことができる。 あまりにも多岐にわたっているため、説明不足となっていたりする部分もないわけではないが、人文知ないし現代思想のかなりの範囲に対して言及がなされており、様々な方面への導入にもなっている。 本書を貫いているのは、公共性とは可能か、もっといえば、公共性はあった方がよいのか、という問いである。 この問いを反復する前半部は見通しもよい。 しかし、この問いへの答えは必ずしもすっきりとはしておらず、後半の進むにつれて、分かりにくい部分も出てくる。 ただし、やっていることはずっと同じことの反復ともいえるので、決して難しい本ではない。 稲葉は、公共性を「生活世界」と「社会システム」のズレを克服しようとしていくことと定義する。 「社会システム」というものは、人