戦争も商売も、成否は「諜報」の一点に在る。 「密偵に費やす金は最も巧みに運用されたる金である。政府がこれを支出するに吝かなるは、怠慢の極致と評すべし」――不朽の名著『外交談判法』中で、フランソワ・ド・カリエールは斯く述べた。 「復讐は武士の大事である、ひとたび討ち損なえば一生の恨みを遺すのである。なればこそ敵を討つにはあらゆる手段を行使して、敵に関するあらゆる事情を精密に知り、愈々敵を討つ段にあたっては、一挙して必ず仕留めるの決心がなければならぬ」――わがくに軍学の泰斗たる山鹿素行もこういう意味の沙汰事を、その弟子達に伝えたものだ。 (Wikipediaより、山鹿素行) 諜報を盛んにする国は興り、疎かにする国は亡ぶのである。 これはほとんど、公理に近い。 ――ざっとそんな塩梅で。 帝政ロシアが本能的な南下衝動に従って朝鮮半島を窺っていた頃のこと。 これから手中に収めるであろう土地の実態を確