望遠鏡の主鏡を研磨するウィリアム・ハーシェル(左)と、作業に没頭する兄を気遣うカロライン(右)を描いたカラーリトグラフ。(ALBUM/WELLCOME IMAGES) 1770年代初頭まで、天体観測といえば肉眼で見える太陽や月や惑星を観察するのがほとんどだった。しかしウィリアムとカロライン・ハーシェル兄妹は、自身が改良した望遠鏡を駆使して、太陽系の外にある恒星や星雲を初めて体系的に観測し、近代的で科学的な天文学の方向性を決定づけた。(参考記事:「人類は大昔から月に魅せられ、月を見つめてきた、その歴史」) 兄妹は、ドイツのハノーファーの音楽一家に生まれた。庭師の子からオーボエ奏者になった父イザークは、出世の手段として10人の子どもたちに音楽教育を施した。第4子のウィリアムは、オーボエ、バイオリン、オルガンを習得し、父と同じ音楽の道に進んだ。 フランスとの七年戦争がハノーファーに迫ると、175